ラリックのチョーカー‘セイヨウサンザシ’(1902~04年 パリ装飾美)
アール・ヌーヴォーの代名詞のようになっているエミール・ガレ(1946
~1904)のガラス工芸品が体のなかにどっさり入ったのは諏訪湖にあ
る北澤美のおかげ。そのなかで‘最高の瞬間’を体験したのが‘フランスの薔薇’。
こんなすばらしいガレが日本にあるというのが本当にスゴイ。ジャポニズム
の強い影響をうけたガレを買い求める日本人コレクターの情熱の賜物といえ
るかもしれない。
2005年、江戸東博で大規模な‘ガレ展’が開催され、オルセーから彫刻‘手’
が出品された。パリでオルセーに足を運んだとき、これを目にしたか確たる
実感がないので有り難い展示だった。小さな貝殻がくっついた指一本々がじ
つに生々しくオカルト映画に使われた美術装飾のシーンを連想した。夜、暗
い部屋でこの手をみたら怖いかもしれない。
2010年パリで美術館巡りをしたとき、ルーヴルのすぐ近くにあるパリ装
飾美にも寄った。お目当てはルネ・ラリック(1860~1945)がつく
った宝飾品。思わず足がとまったのがチョーカー‘セイヨウサンザシ’。七宝や
不揃いな真珠を使った粋で洒脱なジュエリーである。女性はこういうのは欲
しくてたまらないだろう。ラリックが装身具のあと挑戦したガラス作品で目
を奪われるものが日本にもある。それは東京都庭園美の‘女性像’。これは
旧朝香宮廷の正面玄関のガラス扉で胸をいっぱいにそらした女性像はギリシ
ャ神話の勝利の女神ニケといわれている。
ラリックと同じ年に生まれたミュシャ(1860~1939)にも息を呑む
作品がある。1899年につくられた‘蛇のブレスレットと指輪’、昔から蛇は
大の苦手だが、黄金に輝く胴体と美しい青の頭のため目をそらさずにみれる。
ミュシャのフォルムに動きを出し装飾を綺麗に見せるデザインセンスには
ほとほと感心させられる。