景徳鎮窯 ‘辰砂釉如意耳瓶’(清・乾隆年間・1736∼95 香雪美)
中之島美のあと、ここから歩いて10分くらいのところにある中之島フェス
ティバルタワー・ウエストをめざした。とても暑かったが、はじめての大阪
ビジネスタウンのため気が張っており、堂島川をはさんで左右に現れる建物、
たとえばABS放送、サントリー、中之島ダイビルなどから新鮮な刺激をも
らうので体はしっかり動いている。2018年に開館した中之島香雪美は
フェスティバルタワーの4階にあった。ここで6/18から陶芸家河井寛次郎
(1890~1966)の回顧展がはじまった(8/21まで)。
明治以降に活躍した陶芸家のなかでは板谷波山、富本憲吉、民藝派の河井寛
次郎、濱田庄司、バーナード・リーチが回顧展へ足を運ぶ回数が群を抜いて
多い。そのため、図録が積み重なっていく。寛次郎は今回のものをふくめる
と全部で5冊。この特別展を知ったのは新幹線の予約をした1ヶ月前、運よく
願ったりの寛次郎展に遭遇した。果たして、出品作ははじめてお目にかかっ
たものが多く、河井寛次郎の人気をあらためてみせつけられた。
100点近くある出品作のなかでのっけから、清朝乾隆年間につくられた
‘辰砂釉如意耳瓶’に思わず、おおーと唸ってしまった。若い寛次郎もこうした
中国の磁器の色彩の鮮やかさに心を打たれたことだろう。神戸にある香雪美
を訪問したとき、このつやつやした赤のパワーに目がくらんだ記憶がないの
で、初対面だったかもしれない。ここにやって来た甲斐があった。同じく
香雪美蔵の寛次郎の‘花扁壺’の優しい花模様に大変惹かれた。
京都の河井寛次郎記念館で夢中になってみた‘三色打薬扁壺’がなんと姿を現し
てくれた。柔らかい薄茶色の生地に赤、緑、黒の釉薬が華麗にハーモニーを
奏でている。これをつくったとき寛次郎は71歳。晩年期にこんな近代感覚に
あふれ抽象陶芸をも感じさせるものを生み出すのだから、作家の美の感性は
本当にスゴイ。青の強い磁力に惹きこまれる‘海鼠鉢’もいい気持でみていた。
そして、大きなサプライズだったのがこれまで回顧展に出品されたことのな
い‘丸紋壺’、こんな見事なフォルムとインパクトのある紋様の丸壺があった
とは!