キスリングの‘ルネ・キスリング夫人の肖像’(1920年 名古屋市美)
ヴァン・ドンゲンの‘グラヴェスタインの肖像’(北海道近美)
大阪中之島美で行われている‘モディリアーニ展’(4/9~7/18)は3ヶ月
のロング興行。目玉のモディは国内外の美術館や個人コレクターが所蔵する
ものを集結させただけでなく、おまけとして‘エコール・ド・パリ’と呼ばれた
画家たちの作品も一緒に展示している。これらは国内の美術館にあるものだ
が、回顧展が開かれるときは必ずお声がかかる定番の名画として知られてい
る。だから、おまけがおまけになっていない嬉しいラインナップが実現した。
ポーラ美から出品されたモディの‘ルネ’と絶妙なペアリングになっているのが
キスリング(1891~1953)の‘ルネ・キスリング夫人の肖像’。画家
仲間だった二人はルネを自分流の表現で描いた。モデイはキスリングの恋人
ルネが男装好みなのを知っているのでそれを反映させて仕上げた。一方、
キスリングの絵ではルネは芯の強そうな女性の雰囲気を漂わせ、強い存在感を
みせている。この絵は2019年東京都庭園美で開催されたキスリング展の
とき、展示替えで見逃した作品。思わぬところでリカバリーが果たせた。
素直に嬉しい!
久しぶりに対面した西洋美にあるスーティン(1893~1943)の‘心を
病む女’の前にも長くいた。国内の美術館でスーティンをみる機会はほとんどな
いので、燃えるような赤の服を着たちょっとお婆さんにみえるこの女には夢中
になる。藤田嗣治(1886~1968)の絵が今回なんと3点も展示されて
いる。‘タピスリーの裸婦’(京近美)、‘自画像’(名古屋市美)、‘二人の女’
(北海道近美)。藤田が好きな人はたまらないだろう。モディ以外のいい絵が
このように次から次と登場すると、展覧会の価値はぐんと跳ね上がる。多くの
絵画ファンが押し寄せるのも即納得。
キース・ヴァン・ドンゲン(1877~1968)の‘アガーテ・ヴェゲリフ・
グラヴェスタインの肖像’に思わず足がとまった。こんないいドンゲンが北海道
近美にあったとは!国内のドンゲンはたとえば、大谷コレクションや諸橋近美
などでお目にかかったが、この絵の存在はまったく知らなかった。おまけ一番
の収穫。7/9からはじまるパナソニック汐留美の‘ドンゲン展’にむかって気分が盛り上がってきた。