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Channel: いづつやの文化記号
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美術で‘最高の瞬間’! 宗教画の美しさ

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 フラ・アンジェリコの‘受胎告知’(1440年代前半 サン・マルコ美)

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マザッチョの‘聖三位一体’(1427~28年 サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂)

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 マザッチョの‘楽園追放’(1427年 ブランカッチ礼拝堂)

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  ゴッツォリの‘東方三博士の行列’(1459~60年 メデイチ・リカルデイ宮)

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 ブロンズィーノの‘愛のアレゴリー’(1540~45年 ナショナルギャラリー)

美術鑑賞を趣味の中核にしようと思いまず取り組んだのはルネサンス美術。
だから、海外旅行をしたときはルネサンス期の絵画や彫刻に大半の鑑賞エネ
ルギーを注ぎこんだ。そして、限られた時間で効率よく美術館や聖堂をまわ
るため事前にできるだけ多く作品情報を集め必見作品のメモ帖をつくって
おいた。これが大変役立った。

古典絵画の大半は宗教画と肖像画、風景は人物描写の背景に描かれること
はあるがあくまで主役を引き立てる役割にすぎない。宗教画の前に立つと
心が鎮まり、描かれているテーマに思いをはせる。お馴染みは受胎告知の
場面を描いたもの。ヴァリエーションは様々で好みの画面構成と人物描写で
惹きこまれる画家が決まってくる。

もっとも魅了されているのはフラ・アンジェリコ(1400~1455)
の‘受胎告知’。サン・マルコ聖堂の階段を上がったところにどんと飾って
あった。視線が集中するのが左の大天使ガブリエルの羽根の多彩な色彩。
濁りのない心が晴れやかになるような色彩の美しさはルネサンス絵画の
真髄をみている感じ。大興奮だった。そして、ボッティチェッリ
を思わせる外の草花のにも肩の力がすっと抜ける。ぱっとみると平板な印
象だが、遠近法により部屋の奥行き感がでておりゆったりこの空間を楽し
める。

マザッチョ(1401~1429)の‘聖三位一体’はまるでイリュージョン
絵画をみているよう。これは正確な遠近法にもとづいて描かれた最初
の絵画といわれている。視点を低くして人物をみあげるように描いている
ため、壁のむこうにも空間が広がっているように錯覚する。遠近法の威力
を強く感じさせる絵である。フィレンツェにはもうひとつ忘れられな
いマザッチョの絵がある。それはデル・カルミネ聖堂のブランカッチ礼拝
堂に描かれた‘楽園追放’。イヴの眉を下げて悲しみにくれる表情が胸に焼き
ついている。この絵をみることで楽園を追放されることがどんなに辛くて
悲しいことかを実感した。

絵画をみていて期待を大きく上回る作品に出会うことがある。ゴッツォリ
(1421~1497)の‘東方三博士の行列’はそんな絵の一枚。眼を奪わ
れたのは金色を多用した装飾性の高い表現。白い馬に乗っているのは当時
10歳をすぎたばかりのロレンツォ・イル・マニフィコの理想化された
肖像。この絵のことを帰国して熱く語っていた。マニエリスムの中心人物、
ブロンズィーノ(1503~1572)の‘愛のアレゴリー’は不思議な魅力
をもった絵。右のバラの花をもっている少年は笑っているし、その上では
老人が遠くをじっと眺めている。暗い背景のところにいる仮面を被った
ような女性の顔がとても不気味。


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