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Channel: いづつやの文化記号
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アメリカ文学の森へ!

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 トマス・コールの‘生命の旅、子供’(1842年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー)

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 トマス・コールの‘生命の旅、老年’(1842年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー)

現在、Eテレの番組でみているのは2つ。以前は‘美の壺’をよくみていたが、
やきものなど工芸関連のものはひととおり取り上げてもらったので卒業。
これに対して、‘100分de名著’(月曜夜10:25~10:50)と‘サイ
エンスZERO’(日曜夜11:30~12:00)は毎週ではないが注目
している本やテーマのときは見逃さずにチャンネルをあわせている。

これまで‘100分’は仏教や哲学の名著が登場したときは熱心に聞いていた
が、いかにも大学の文学部の講義を連想させるフランス文学やイギリス文学
などはみてなかった。ところが、ヘミングウエイ(2021年10月)と
エドガー・アラン・ポー(2022年3月)のスペシャルは食いつきがよく
、多くのことを教えてもらった。頭によく入ったのは講師の先生の話が大変
上手だから。こうなると、都甲氏(早大教授)と巽氏(慶大名誉教授)の
著作を買って読もうという流れになる。都甲氏の‘教養としてのアメリカ短篇
小説’(2021年10月 NHK出版)はこの前紹介したので今回は巽氏の
本を3冊。
☆‘E・A・ポウを読む’(1995年7月 岩波書店)
☆‘アメリカ文学史’(2003年1月 慶応義塾大学出版会)
☆‘ニュー・アメリカニズム’(2019年8月 青土社)

どの本も新鮮な心の昂ぶりがある。アメリカ文学を論ずる本というのはこん
な調子なのか、という感じ。これまで岩波文庫で読んだコールリッジの‘シェ
ークスピア論’(1939年)やトーマス・マンの‘ゲーテを語る’(1993年)
、‘ゲーテとトルストイ’(1992年)はかなりがっちりした文学論なので、
こういう軽く読めるのは楽しい。アメリカの歴史もふくめていろいろな話がで
てくる本に遭遇すると、元来好奇心が旺盛なため大学で文学に関する公開講座
があるのなら一度出かけてみようかという気になる。

巽氏の分析はなかなか鋭くポウ(1809~1849)への理解がだいぶ進ん
だ。これまでは推理小説の父というイメージだったポウがSF、ホラーなどで
も先駆的な本を書いていたとは。それを可能にしたのはポウが雑誌の編集を
していたからだとわかった。マガジニスト(雑誌文学第一主義者)というのは
はじめて知った。‘E・A・ポウを読む’で驚くことがあった。最後の章‘美女た
ちのいない庭’にハドソンリバー派のトマス・コール(1801~1848)
の‘生命の旅’がでてきた。ポウとコールはほぼ同時代を生きている。コール
は1818年17歳のとき渡米しフィラデルフィアへやって来たイギリス系移
民だった。

ポウの最盛期はフィラデルフィア時代(1838~44年)で傑作‘黒猫’
(1843年)などが生まれている。NYへ1844年移りその2年後ニュー
ヨーク・シテイ北部のフォーダムに小屋を得てハドソンリバー派が描いた
ピクチャレスク風景に囲まれて暮らしていた。アメリカのブランド美術館を
まわるととてもいい気持になる大風景画を描いたコールがポウとコラボして
いた。これは気がつかなかった。


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