ルノワールの‘アルジェリア風のパリの女たち’(1872年 西洋美)
ゴーギャンの‘シュフネッケル一家’(1889年 オルセー美)
印象派が好きな美術ファンは日本に数多くいるが、そのなかでとくにモネ
(1840~1926)に魅了されているなら国内の美術館をまわってい
るだけでも大きな満足がえられる。過去開催されたモネ展にでかけて感心
させられるのが日本にあるモネの多さ。作品もバラエティに富んでいて、
初期の作品から連作‘積み藁’や‘睡蓮’などの質の高い作品が目を楽しませて
くれる。
日本の美術館でモネの殿堂ともいえるのが国立西洋美。モネがなんと13
点もある。これらはあの有名な松方コレクション。松方幸次郎(1866
~1950)は神戸の川崎造船所(現・川崎重工業)の社長で明治の元勲
の松方正義の三男だった人物。第一次大戦前後の造船ブームで得た莫大な
資金を手にロンドンやパリで近代絵画を買いまくった。美術活動を支援す
るパトロンであり大コレクターであった。
2019年、西洋美の開館60周年を記念する‘松方コレクション展’が
開催されて、オルセーからゴッホ(1853~1890)のとびっきり
の傑作‘アルルの寝室’が出品された。実はこの絵は松方コレクションだっ
たが、金融恐慌が川崎造船所をも直撃し絵画だけでも千点を超すといわれ
た大コレクションは荒波にもまれ様々な運命をたどることになった。パリ
に残ったその一部は第二次大戦をくぐりぬけたが、その後敵国資産として
フランス政府に没収された。そして、日本とフランスとの間でこのコレク
ションについて長い交渉が行われ、1959年フランス政府からの‘寄贈’
という形で作品が引き渡されることになった。
でも、フランスは重要な作品は残留リストをつくり返してくれなかった。
‘アルルの寝室’はダメでそのかわりの‘寄贈’とされたのがルノワール
(1841~1919)の初期の名画‘アルジェリア風のパリの女たち
(ハーレム)’。ゴーギャン(1848~1903)の‘シュフネッケル一
家’も返してもらえなかった。マネ(1932~1883)は自画像は2点
しか描いてないが、その1点が日本にある。つい最近、ア―ティゾン美の
コレクション展で久しぶりに会った。