ピカソは西洋美術史にこだわると必見の絵は‘アヴィニョンの娘たち’
(MoMA)とスペインのソフィア王妃芸術センターにどーんと飾ってある
‘ゲルニカ’なので、この2点をみてしまうとなんだか大仕事をしたような気に
なる。こういう有名な絵は日本ではみられないので絵画鑑賞を趣味にすると
いうことは海外旅行にも精を出すことにもなる。幸いわが家は隣の人も旅行
好きなので、数々の名画を楽しむことができた。今では名所観光より美術品
の追っかけのほうが旅の目的になっている。
天才ピカソの作品をみる機会が増えれば増えるほど、絵画という視覚芸術の
奥深さを感じるようになる。ピカソが新しい立体表現、キュビスムへ突き進
むことになったのはセザンヌのいろんな視点が入ったリンゴの絵に刺激され
たから。‘水差しと果物鉢’はオーソドックスな静物画だが、写実的な表現と
同じくらい魅了されている。みた瞬間にぐっと惹き込まれたのは画面がMy
カラーの緑&黄色にあふれていたことも関係している。この色の組み合わせ
だとモチーフの輪郭線が黒の太い線であってもそう気にならない。
‘ゲルニカ’以降に描かれた作品には角々した人物が多く登場する。‘朝の調べ’
はドイツ軍によるフランスの占領時代(1940~44年)に描かれたもの
でセレナードとオダリスクという伝統的なテーマがカリカチュア風に変奏さ
れている。真横と垂直に配置された二人の女性が印象深い。‘膝をかかえる
ジャクリーヌ’は日本建築の柱のような長い首と古代エジプトのファラオを
連想させる頭が目に焼きついている。ピカソは最後に愛した女性となった
ジャクリーヌを翌年には柔らかく丸いフォルムで描いた。それが‘トルコ帽の
女性’。この顔の描き方は‘ドラ・マールの肖像’のころに戻った感じ。
ドラクロアの絵を描いた‘アルジェの女たち’はピカソが74歳のときの作品。
これは2015年、クリスティ―ズのオークションで215億円
(1億7900万ドル)の値がついた。この金額は競売市場最高額だった。
ピカソはほかにマネの‘草上の昼食’とベラスケスの‘ラス・メニーナス’を描い
ているが、この絵が最高にいい。いつかお目にかかりたいと願っているが、
夢は叶うだろうか。