ダ・ヴィンチの‘ジネヴラ・デ・ベンチ’(1474年 ワシントンナショナルギャラリー)
ラファエロの‘アルバの聖母’(1510年 ワシントンナショナルギャラリー)
ラファエロの‘聖者と玉座の聖母子’(16世紀 メトロポリタン美)
ラファエロの‘ゲッセマネの祈り’(1504年 メトロポリタン美)
ボッティチェリの‘ジュリアーノ・デ・メデイチ’(1478年 ワシントンナショナルギャラリー)
アメリカの美術館をまわっていて、ワシントンのナショナルギャラリーだけ
はほかとちがう特別な感覚をもつことがある。イタリアルネサンス絵画が
展示してある部屋にいるとフィレンツェのウフィツイ美あるいはパリの
ルーヴルにいるような気分になる。そう思わせるのはそこにダ・ヴィンチ
(1452~1519)の‘ジネブラ・デ・ベンチ’とラファエロ(1483
~1520)の‘アルバの聖母’が飾ってあるから。アメリカの大美術館にダ・
ヴィンチがあってもおかしくないが、なにしろ数が少ないのでここにこの
女性の肖像画があるのはやっぱりスゴイことである。
そして、ラファエロの‘アルバの聖母’もこれぞラファエロ!という感じのす
ばらしい聖母像。これはナショナルギャラリーの創設者である実業家のアン
ドリュー・W・メロン(1855~1937)が旧ソ連のエルミタージュ美
から購入したもの。ここにはもう2点ラファエロがあるが、‘アルバの聖母’
の磁力が強すぎてどうしても印象が薄くなってしまう。ピッティ美の‘小椅子
の聖母’、ウフィツィの‘ひわの聖母’、ルーブルの‘美しき庭師’などとともに
この絵をみれたことは生涯の想い出である。
一方、メトロポリタン美にあるラファエロは祭壇画の‘聖者と玉座の聖母子’
と小さな物語絵の‘ゲッセマネの祈り’。国立新美で行われる‘メトロポリタン
美展’には‘ゲッセマネの祈り’がやって来る。日本でラファエロがみられるな
んて滅多にないことだからしっかりみたい。これは祭壇画の下部を飾るプル
デッラ(祭壇下段画面)だったもので、最後の晩餐のあとオリーブ山に引き
こもったキリストが聖ペテロ、聖ヤコブが眠りこんでいる間に祈りを捧げて
いるところが描かれている。
ボッティチェリ(1445~1510)はナショナルギャラリーが存在感の
ある‘ジュリアーノ・デ・メディチ’を所蔵しているのに対し、METには小品
2点‘聖ヒエロニムスの最後の聖体拝領’とお馴染みの画題‘受胎告知’がある。
国立新美にこのうち1点でも出品されたら嬉しかったが、世の中そううまく
はいかない。