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Channel: いづつやの文化記号
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Anytime アート・パラダイス! ジョージ・グロッス

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   ‘自殺’(1916年 テートモダン)

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   ‘社会の柱石’(1926年)

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  ‘オスカー・パニッツァに捧ぐ’(1917~18年 シュトゥットガルト美)

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    ‘プロムナード’(1926年 アーチゾン美)

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  ‘詩人マックス・ヘルマン・ナイセ’(1925年 マンハイム美)

オットー・ディックス(1891~1969)と同時代を生きたジョージ・
グロッス(1893~1959)は漫画的な描き方の点で共通するところが
あるが、グロッスは反軍国主義、社会批判を画題にして人々のいだく不安感
や人間の冷酷さ、醜さを辛辣に描きだした。生まれたのはベルリンでドレス
デンの王立美術学校で学んだあと故郷にもどり、第一次世界大戦後はベル
リン・ダダの中心メンバーとして前衛画家の道を突き進んでいった。グロッ
スを知ったのはポンピドーにあるコラージュで構成された肖像画‘不幸な発明
家、アウグスト叔父さんを忘れないで’。これはダダ全開だが、そのあとお目
にかかった新聞の社会風刺漫画を連想させる作品のインパクトのほうが3倍
も4倍も大きかった。

ロンドンのテートモダンにかなりショッキングな絵が飾ってある。1916
年に描かれた‘自殺’、ピストル自殺した男が大の字になっている。画面が赤一
色になっているのは流れ出る血を表しているのかもしれない。男の横には
幽霊のようなものが姿を現し、その向こうでも男が首を吊っている。大きな
ガラスの内側から外をみているのは娼婦。‘あら、さっきあの人が首を吊った
ばかりなのに、今度はピストルで頭をぶち抜いたの?’とうそぶいているよう。

‘社会の柱石’はどこの美術館の展覧会だったか忘れたが日本でみた。ドイツ人
の画家の特徴である硬くて圧が強いイメージが風刺漫画に形を変えて現れた感
じで息を呑んでみた。下から上へといろんな人物が登場する。ビールのジョッ
キを持っている男性はナチスのシンボルマークの入ったネクタイをしめている
。左の男はジャーナリスト、その上は教会の牧師、最後は軍人たち。夫々社会
の柱石。ヨーロッパの街を歩いていると、赤い鼻が目立つ人や頬の皮膚に細い
血管がひび割れのように走っている人によくでくわす。ドイツ人にかぎらな
いが、そのリアルな表現が印象深い。

‘オスカー・パニッツァに捧ぐ’の衝撃度はマグニチュード7の地震並み。建物
の垂直の軸が斜めに傾き街全体が崩壊のパニックに陥っている様子。ガラスか
ら透けて見えるビルの内部は火事が発生したのかどす黒い赤で燃えているよう。
俯瞰の視点でとらえた街路は大勢の人で埋め尽くされている。顔はだいたい丸
かそれをぐにゃっとゆがませた形。大半は男性だが、よくみると骸骨や裸婦も
混じっている。グロッスは第一次世界大戦のドイツの混乱を風刺をこめてモン
タージュ技法で再現している。

アーチゾン美にある‘プロムナード’はディックスの‘サロンⅠ’がかぶる漫画的な
風俗画。後ろから二番目のドレスアップした女性がこちらを見つめる姿が妙に
気になる。こんないい絵を手に入れるのだから、旧ブリジストン美はブランド
美術館。‘詩人マックス・ヘルマン・ナイセ’はグロテスクな印象を与える肖像画
。歳をとると体が縮み曲がってくるので頭がやけに大きくみえるようになる。


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