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Channel: いづつやの文化記号
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Anytime アート・パラダイス! レイセルベルへ

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   ‘舵を取る男’(1892年 オルセー美)

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 ‘満潮のペール=キリディ’(1889年 クレラー=ミュラー美)

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  ‘7月の朝’(1890年 クレラー=ミュラー美)

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  ‘マリア・セート’(1891年 アントワープ王立美)

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  ‘マルト・ヴェルハーレンの肖像’(1899年)

画家の描きたい題材は制作活動のなかでいくらかのバリエーションがでてく
るのはそれほど驚くことではないが、画業全般にわたって通覧できる回顧展
に遭遇することがないとそれはわからない。だから、ある時期に描かれた
作品が最初にインプットされると、その作風で画家のイメージができてしま
う。ベルギーのヘントに生まれたテオ・ファン・レイセルベルへ(1862
~1926)の場合、1988年西洋美であった‘ジャポニスム展’に出品さ
れた‘舵を取る男’が目に焼きついており、これまでみた海景画の傑作のひと
つとして心に強く刻まれている。

この頃は絵画鑑賞が趣味といってもまだ入り口のところでうろうろしてい
るレベルだったから、点描法(分割主義)の絵に慣れてなく描き方よりは
手前右端に男を大きくとりこみ帆や船縁を一部だけみせる構図のほうに視線
が集中した。浮世絵の手法が当時のヨーロッパの画家たちにこれほど影響を
与えたことに正直驚いた。点描による風景画は‘満潮のペール=キリディ’が気
に入っている。影の描写がとても上手く手前の岩の断崖がなにか大きな動物
のような感じがする。中景、遠景の小さな島やヨットとの対比を際立たせる
のも浮世絵を真似ている。

レイセルベルへのサプライズは10年前、クレラー=ミュラー美を訪問した
ときまた起こった。人物画でもいい絵を描いていた。それが‘7月の朝’
(あるいは‘果樹園’、‘庭園に集う家族’)。これをみてある絵がピンとくる人
は相当な点描画通。そう、明らかにスーラの‘グランド・ジャット島の日曜日
の午後’を意識している。描かれた5人の女性は皆顔をみせないところも同じ。
ゴッホがお目当てででかけたクレラー=ミュラーなのに、こんなビッグな
オマケがついているのだから美術館巡りはやめられない。

画家が風景画だけでなく女性画の名手でもあることが再度わかったのが新印象
派展(2015年 東京都美)でみた‘マリア・セート’と‘マルト・ヴェンハー
レンの肖像’。点描画をみるときのルールにのっとり少し離れて魅力いっ
ぱいの肖像画をうっとりみていた。女性の存在感を際立たせ美しく描く画家は
またまたルノワールとマネだけではなかった。レイセルベルへに乾杯!


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