現在、六本木ヒルズにある森アーツセンターで開催中の‘ラファエロ前派展’(1/25~4/6)をみてきた。この展覧会は4/6までのロングラン興行、作品を所蔵するテートブリテンは自慢のお宝であるロセッティ(1828~1882)の‘プロセルピナ’やミレイ(1829~1896)の‘オフィーリア’をこれほど長いこと不在にしていいのだろうかと、つい余計な心配をしてしまう。
イギリスの美術館でナショナルギャラリーの作品は日本で一度も名品展を体験してないのに、テートブリテンのものは幸運なことに鑑賞する機会が多い。1998年には東京都美で名画がごそっと公開され、念願だった‘プロセルピナ’と‘オフィーリア’を今回のようにロンドンではなく日本でみることができた。このときからラファエロ前派の虜になった。
そして、2008年Bunkamuraがなんと‘ミレイ展’を主催、‘オフィーリア’がまた登場した。このようにターナー、コンスタブルとともにイギリス絵画の中核的な存在であるロセッティやミレイの代表作が何度もお披露目されるということは日本でラファエロ前派の人気が高いことの証。そのためか会場の森アーツセンターには予想をこえる大勢の人たちがつめかけていた。
お目当てのロセッティは油彩、水彩があわせて19点でている。圧巻なのが最後の部屋に飾られた7点。これはすごいラインナップ。まさにロセッティのいい絵、全部みせちゃいます、という感じ。一番の収穫はアヘン中毒がもとで亡くなった妻のシダルを回想して描いた‘ベアタ・ベアトリクス’。
ロセッティは長い時間をかけてこの油彩を仕上げたあと、すくなくとも6枚のレプリカを制作している。これまでフォッグ美蔵の水彩ヴァージョンと日本で遭遇し、08年にはシカゴ美で油彩のものに出会った。ところが、最初に描かれた油彩を08年訪問したテートブリテンでみる予定だったの不運にも展示されてなかった。
だから、残念な気持ちを引きずっていたが、6年経ってようやくお目にかかることができた。素直に嬉しい。金髪のまわりに日があたり神秘的な雰囲気につつまれたシダルの姿を息を吞んでながめていた。
黄色の豪華な衣装を身につけたワイルディングがモデルとつとめた‘モンナ・ヴァンナ’は見栄えのする見事な女性画。東京都美の名品展にも展示されたので今回で3度目の対面となったが、その強すぎる魅力のためいつも近くに寄っていけない。
初見の‘聖なる百合’は日本でみたことのある‘祝福されし乙女’(フォッグ美)のための習作、金箔が施された背景と衣装、そしてふさふさとした金髪に吸いこまれていく。瞬時にクリムトの絵が頭をよぎった。