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Channel: いづつやの文化記号
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Anytime アート・パラダイス! 歌川国芳(8)

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     ‘蝦蟆僊人と相馬太郎良門’(19世紀)

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        ‘深見草獅子彩色’(1847~52年)

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        ‘禽獣図絵 獅子’(1839~41年)

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        ‘流光雷づくし’(19世紀)

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        ‘忠義重命軽’(19世紀)

国芳の回顧展が定期的に行われるのは描く画題が幅広いことと関係している。
これは尊敬する北斎に少しでも近づきたいという気持ちが強かったからだろ
う。出世作の武者絵からスタートし、役者絵、美人画、戯画、風景画なんで
も高いレベルで描ける。海外で国芳が注目されているのはこのあたりが受け
ているにちがいない。

国芳がスゴイなと思うことはまだある。ここにあげる絵は北斎を超える描き
方と発想によって生み出されている。‘蝦蟆僊人と相馬太郎良門’は平将門の
遺児・相馬太郎良門が筑波山で蝦蟇仙人から妖術を授かる場面が描かれてい
る。視線は仙人の口から飛び出した美人と中央の相馬太郎良門に向かうとこ
ろだが、注目すべきは相馬太郎良門のまわりにたくさんいる蝦蟇たち。
よくみると蝦蟇たちは上のほうで覆いかぶさるような岩の塊や鋭角的に突き
だした岩肌とダブルイメージになっている!国芳の絵でシュルレアリスムの
表現に遭遇するとは。

ダリもびっくりのダブルイメージは‘深見草獅子彩色’と‘禽獣図絵 獅子’でも
みられる。深見草は牡丹のこと。青と赤の牡丹の花びらをじっとみていると
獅子の顔が浮かんでくる。はじめてみたとき200%仰天した。浮世絵師が
こんなシュールな表現をするのか!さて、青の牡丹のなかに何頭の獅子が潜
んでいるか、赤の方は? 禽獣図絵に描かれた親子獅子ついても、目が慣れ
てくると岩肌や牡丹と部分的に重なってくる。牡丹のところにもう一頭の子
獅子がいるが、どこ?

雲の上の雷様が職人になっていろいろ仕事をしてところを描いた‘流光雷づく
し’もおもしろい。上の雷たちは太鼓をたたく音響係、柄杓で樽から水をすく
って雨を降らせる係、さらに稲妻の小道具を研ぐものもいる。
‘忠義重命軽’は一発でKOされた。物体化した漢字の‘忠義’をしんどそうに担
ぐ義士がおり後ろの義士は右手で‘命’を軽くつかんでいる。国芳の頭からは
ブラックユーモアもでてくる。これは一生忘れられない。        


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