小さい頃から漫画本を楽しむことがないので、ヒットした漫画や戯画の系譜
に疎い。だから、もっぱら喜劇映画、落語、漫才、‘鳥獣戯画’とか浮世絵の
戯画のような絵画作品から笑いを提供してもらっている。国芳には笑いがテ
ンコ盛りの戯画がたくさんある。
お気に入りのひとつが‘流行達磨遊び’。現在何点確認されているのかわからな
いが、2011年に開催された歌川国芳展(森アーツセンターギャラリー)
で2点遭遇した。おもしろい発想なのが‘手が出る足が出る’。達磨職人が目を
入れると生きた達磨に変身する。‘おらは力自慢の達磨だぞー!’ 横では先に
命を授かった達磨が職人を指さし‘お前さんが目を入れると仲間が増えるのさ、
どんどんやっておくんな’とゲラゲラ笑っている。子どもは中身が出てこない
ように必死で押え込もうとしている。これは腹の底から笑える。
‘蕎麦・首引き’もたまらなくいい。蕎麦を美味しそうに食べまくる達磨、誰で
も好物にありついたときはこんな顔になる。観光旅行で岩手県へ行ったとき
花巻で有名なわんこそばをいただいた。一皿分の蕎麦は少ないので皿がこの
絵のように何枚も積み上がっていく。後ろでは太鼓腹をだして土俵入りの恰好
をしたり、首引き遊びの真っ最中。
‘似達磨の一軸’は濃い墨で禅画の達磨が描かれている。この人物は4代目中村
歌右衛門。天保の改革で舞台上の姿を描くことが禁じられたため、国芳は歌右
衛門を達磨に見立てることでお上の目をかいくぐった。歌右衛門は人気役者な
ので鯛になったり亀になったりと変身に忙しい。思わず足が止まるのが‘流行
うきよひょうたん’。真ん中にいる男はよくみると顔、腹、手足がみな瓢箪にな
っている。これは参った!