やきもの鑑賞は絵画、彫刻とともに展覧会訪問の楽しみのひとつ。そのため、
どこの美術館でやきもの展があるかは入念にチェックしている。でも今は新
型コロナ感染の影響で美術館へでかけること自体が極端に減っているので、
出動の日程調整どころの話ではない。こういう状況下では図録や美術本に
掲載されている名品を以前に増してしみじみ愛でる心境になる。
‘茶の湯展’が開催されるときは美術館自慢のお宝がどどっと出品される。そう
した茶の湯オールスターともいうべき定番茶碗が東博にはいくつもある。
展示されている場所は本館1階を入館して反時計回りで進むと二つ目の角の
部屋。ローテーションされてでてくるが、何度も通っているとだいたいお目に
かかれる。大好きな志野や織部は東博でまず目を馴らしたからこの部屋には
愛着がある。
‘大井戸茶碗 銘有楽’や‘彫三島 銘木村’は茶人たちが好んだ朝鮮のやきもの。
茶碗には歴史上の人物が登場する。大井戸茶碗は織田信長の弟有楽斎が所持し
ていたことからこの名前がついている。斜めの白い線が横に連続した桧垣文が
印象深い彫三島はここで覚えた高麗茶碗。あわせて日本からの注文によってつ
くられたことも知った。
さて、志野、織部である。‘志野茶碗 銘振袖’と‘鼠志野鶺鴒文鉢’の前にくると
ニコニコ顔になる。角いような丸のようなフォルムと白の釉薬に鮮やかに映え
る緋色が目を楽しませてくれる。一羽の鶺鴒(せきれい)が描かれた鼠志野。
鳥をどんともってくるという大胆な発想に感心する。Myカラーの緑がぐっと迫
ってくる‘織部扇形蓋物’も時代を突き抜けてる意匠感覚が心をとらえて離さない。