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Channel: いづつやの文化記号
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美術館に乾杯! 東京国立近代美術館 その五

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     松林桂月の‘春宵花影図’(1939年)

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     小野竹喬の‘池’(1967年)

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       福田平八郎の‘雨’(1953年)

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       東山魁夷の‘道’(1950年)

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    加山又造の‘千羽鶴’(1970年)

日本画家が風景画、花鳥画、あるいは美人画にとりくむとき伝統の描き方に
何か新しいもの加えて表現したいと思い精進を重ねる。そのアイデアは
西洋絵画でおきている革新が源泉になることもある。色彩表現、フォルムの
処理などは画家に大きな刺激を与える。ターナーや印象派のモネらによる光
の表現が1939年に描かれニューヨーク万国博覧会に出品された松林桂月
(1876~1963)の‘春宵花影図’にも影響を与えていることがわかる。

京都を創作の拠点にしていた小野竹喬(1889~1979)と福田平八郎
(1892~1974)の頃になると日本画もかなりモダンな感じになって
くる。モチーフがシンプルにとらえられ、フォルムに意匠的、抽象的な要素
がはいってくる。‘池’と‘雨’はタイトルが一字というだけでなく描き方もどこ
か似ている。とくに痺れるのが平八郎の雨を表現。瓦に雨の滴が落ちてその
丸い跡がしばらくありやがて消えていく様子がじつにうまくとらえられてい
る。絵のなかに時間が入っているというのはスゴイ。

東近美は長野市の東山魁夷館同様、東山魁夷(1908~1999)の聖地。
2008年に大回顧展があり所蔵作品がどどっと並べられた。数々の名画の
なかでも印象深いのが‘道’。画面全体にうすく靄がかかったようなところが
特別な感情を駆り立てる。縦にのびる三角形があるようみえる道には人間の
物語がつまっているからこんな風景画に仕上げたのかもしれない。

加山又造(1927~2004)は大好きな日本画家。‘千羽鶴’は光悦・宗達
の‘鶴下絵三十六歌仙和歌巻’がすぐ目の前に浮かぶほど琳派のDNAが現代にし
っかり受け継がれた大傑作。2015年の秋にワシントンのフリーア美で開催さ
れた‘宗達展’では現代の琳派作品として前田青邨、福田平八郎、山口蓬春らと
一緒に飾られた。アメリカ人たちが感心の眼差しでみていたのが目に焼きつい
ている。


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