グエルチーノの‘ゴリアテの首を持つダヴィデ’(1650年頃)
西洋美にしろ東京都美にしろ国立新美にしろ、ウフィツィやプラド、ルー
ヴル、エルミタージュ、ウィーン美術史美のコレクションを順繰りに取り上
げる特別展が開催されることが多く、西洋絵画におけるかなりの数の古典画
の傑作にお目にかかることができた。だが、ルネサンスの後に花開いたバロ
ック絵画に焦点をあてた大きな回顧展はなかなか実現しなかった。
この流れを変えたのが西洋美。21世紀に入りグローバルレベルの一級のバロ
ック展をたてつづけに開催した。
★ラ・トゥール展(2005年)
★グエルチーノ展(2015年)
★カラヴァッジョ展(2016年)
★ルーベンス展(2018年)
こういう展覧会に遭遇すると流石、西洋美という感じがする。海外のブランド
美のように誰もが知っていて人気の高い画家の作品を多く所蔵しているわけで
はないのに、特別展が行えるというのは西洋美にラ・トゥール(1593~
1652)の‘聖トマス’やグエルチーノ(1591~1666)の‘ゴリアテの
首を持つダヴィデ’があるということも大きな強みとなっている。
2016年の展覧会シーンで話題を独占したカラヴァッジョ展に出品された
カラヴァッジェスキのマンフレーディ(1582~1622)の‘キリストの
捕縛’も西洋美の所蔵。平常展に展示されているときとは違ってカラヴァッジョ
の傑作と一緒に飾られるとみちがえるような輝きを放つ。これが回顧展のマジ
ック。同じことがグエルチーノ展に登場したレーニ(1575~1642)の
‘ルクレティア’にもいえる。こんないい絵が平常展に飾ってあった?!となる。