東大駒場キャンパスの近くにある日本民藝館へは何度も通った。最近は足が
遠ざかっているが、改築計画があるようで先月の24日~来年3月末まで休館
となっている。いろんなことを教えてもらった民藝館で最も印象深いのは朝鮮
時代の陶磁器や民画の数々。
小さいながらもとても存在感があるのが‘染付秋草文面取壺’。面取壺の形に魅了
されているが、これは素朴だが品のある秋草の絵柄にぐっとひきこまれる。
柳宗悦(1889~1961)はこの李朝工芸の美しさの心を打たれ、日本の
民芸の発見に邁進する。
大変大きな‘白磁大壺’(高さ53㎝)と‘鉄砂染付葡萄に栗鼠文壺’も心をとらえて
離さない。絵画だけでなくやきものでも予想をこえたサイズだと見た瞬間、
うわー!となる。ここには大壺がもう一点ある。大きな朝鮮の白磁をみる機会は
滅多にないから、いつも食い入るように眺めている。ほかにも俵の形に似てい
る俵壺の前では思わず足がとまる。
名もなき画工が描いた民画の存在を知ったこともここを訪問したことの大きな
収穫となっている。お気に入りはとぼけた味を出している‘山神図’。道士をおも
わせる人物に虎が巻きついている。朝鮮では虎は山の神の乗り物とされているの
で、じつはこの人物は山神。ぺたっとした平板な表現だが、強いインパクトで
迫ってくる。
文字絵は刺激的な一枚だった。信、忠という漢字をじっとみているとそこには人
がいたり、鳥や亀、魚もいる。さらに草花も描かれている。文字のもっている
中国の故事がこうしたモチーフによって描きこまれているのである。これは
おもしろい!シャガールや歌川国芳の絵がちらっと頭をかすめる。