シニャックの‘オレンジを積んだ船、マルセイユ’(1923年)
日本で数点したみたことのないラファエロ前派の作品が松岡美にある。
ミレイ(1829~1896)が晩年に描いた‘聖テレジアの少女時代’。小品
だがお弟と手をつないで歩く少女の凛々しい姿についみとれてしまう。西洋
美の‘あひるの子’とともにここはミレイを楽しめる貴重な美術館である。
日本が世界に誇る藤田嗣治(1886~1968)が‘二人の子どもと
鳥かご’と‘聖誕 於巴里’の2点、そして同じエコール・ド・パリのキスリン
グ(1891~1953)も‘シルヴィー嬢’と‘ブルターニュの女’、‘グレシー
城の庭園’を所蔵しているのも美術館の自慢かもしれない。画家の回顧展に
出品されるのをみるとコレクターの思い入れがよく伝わってくる。
日本は印象派が好きな人がたくさんいてモネを所蔵する美術館が多くあるが、
ここもその例にもれず‘サン=タドレスの断崖’をもっている。でも、展示室で
モネは分が悪く目を見張らせるのは点描で描かれた作品。スーラの相棒の
シニャック(1863~1935)の‘オレンジを積んだ船、マルセイユ’を
ちょっと離れてみると明るい色調で表現された港の光景に魅了される。
横に飾られているクロス(1856~1910)の‘遊ぶ母と子’にも癒され
る。同じように人物を点描で描いたスーラの場合、どこか感情移入がしずら
いところがあるが、この母と子は200%微笑ましく感じられる。二人を
大きく描き背景の奥行きを遠くまでとる構図がとても気に入っている。