2ヶ月前、山梨方面へバス旅行したときフジヤマミュージアム訪問という想定
外のオマケがあった。どどっと並ぶ富士山の絵のなかで目をひいたのが
小倉遊亀(1895~2000)の描いたモダンな富士。日本画家は西洋絵画
を熱心にみているのでなかには洋画家以上に近代西洋絵画のエッセンスを吸収
するものもいる。小倉遊亀が描く人物画はマティスの素描画をみているような
錯覚をおぼえることがある。‘舞う’は外人がみたら喜びそうな絵。大変気に入っ
ている。
片岡球子(1905~2008)の‘むすめ’は面構シリーズに登場する足利尊氏
や北斎のことを思うと数少ない普通の人物画かもしれない。ポチャッとした顔
立ちと丸い目に思わず可愛い!といってしまいそう。ここにはもう一点、国貞
の美人画を連想させる目のつり上がった‘北斎の娘おえい’もある。
島根県生まれの石本正(1920~2015)は舞妓の絵で知られているが、
裸婦の舞妓も多く登場する。山種にはどちらのタイプもあり‘のれん’は正面向き
に描かれた舞妓の全身像。人物画を得意とする場合はモディリアーニのうりざ
ね顔のようにひとつのスタイルがあると印象が強くなる。そういう意味ではこ
の舞妓は石本流が確立されている。
伊東深水(1898~1972)がとりあげた‘吉野太夫’は寛永時代のころ京都
の島原にいた名妓。ただの太夫ではなく和歌、書、茶道を能くした才媛だった。
頭のよさそうな顔をしている。絵画とつきあっていると時代をいろどるいろい
ろな風俗に接することができる。
北沢映月(1907~1990)は京都出身の女流画家。‘想(樋口一葉)’は好
きだった樋口一葉を描いたもの。映画のワンシーンをみているような気分にな
るのは雪景色のなかに線で輪郭化された3人の女性がでてくるから。一葉の小説
の女主人公で真ん中が‘たけくらべ’の美登利。