‘夕食の角笛’(1870年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー)
‘救助にむかう’(1886年 フィリップス・コレクション)
ホーマー(1836~1910)との縁が一気に深まったのは2008年
シカゴ美で水彩画をたくさん集めた特別展に遭遇したとき。隣の展示室では
大ホッパー展をやっており、大忙しだった。ここで手に入れた図録にはメイ
ンの水彩だけでなく油彩も多数載っているので我が家のお宝図録になってい
る。そのあと、ホーマーがアメリカでは高い人気を誇る画家であることが
だんだんわかってきた。足を運んだブランド美術館ではいつも油彩が1,2
点姿を現してくれ目を楽しませてくれるのである。
画家には画題を絞って描くタイプと多岐にわたる画題でその才能を発揮する
タイプがあるが、ホーマーは後者。これがホーマーの魅力。緊迫感のある
画風で高く評価された海洋画は50歳ころから取り組んだテーマでそれ以前
はいろんな絵を描いている。ワシントン・ナショナル・ギャラリーへ出かけた
とき、‘夕食の角笛’に思わず足がとまった。左手を腰にあて右手で夕食を知ら
せるために角笛を吹く少女の姿に見惚れてしまった。白いスカートが風で揺
れているところにいい。こうした動きのある人物描写には注意が集中する。
人物に動きがあるのがホーマーの特徴。新しい農地での仕事が忙しい農夫、
海岸沿いを子供を背負ったり籠を脇にかかえて進む漁師の妻たち。よくみ
ると4人とも後ろ足のかかとが地面からあがっている。そのため、右方向へ
すたすた進む感じがよくでている。‘救助へむかう’はワシントンにあるフィリ
ップス・コレクションでお目にかかった。傾斜のきつい坂を登る3人が背後
からとらとらえられている。事の重大さが最後尾の男性の前傾姿勢でわかる。
‘クローケー’は懐かしい遊び。小さい頃日本でもこれで遊んでいた大人をよく
みかけた。場所は絵のように芝生の上ではなく公園。この遊びは木槌で木製
ボール(日本では鉄の球)を打って鉄の門を通し、相手のボールを追いのけ
ながらゴールのボールにあてるもの。こういう遊びが絵になるというのがお
もしろい。