横浜美術館が実施する企画展は相性が良く、西洋絵画と日本画を上手く組
み合わせて来場者の関心を集めている。ここ十年のスパンでみると下村観山
展(2013年)、ホイッスラー展(2014年)、カサット展(2016
年)が二重丸に値するすばらしい内容だった。
特別展を見終わったあとはいつも導線のままに進み平常展示されているダリ
などの近現代絵画、明治以降の日本画、そしてイサム・ノグチの海蛇が円棒
をつくっているように思えるオブジェも楽しんでいる。ほかにも写真の展示
室があるが、写真は関心が薄いので入ったことがない。
横山大観(1868~1958)のお馴染みの富士を描いた‘霊峰不二’や菱田
春草(1874~1911)の‘夏汀’はもちろん美術館自慢のお宝だが、これ
以上にコレクションの価値が高いのが横浜にアトリエを構えていた下村観山
(1873~1930)の‘闍維(じゃい)’と六曲一双の屏風‘小倉山’
(1909年)。‘闍維’は亡くなった釈迦の火葬の場面が描かれている。涅槃
図は数多く描かれているが光を放つ金棺から白煙が立ちあがるところを表現し
たのはこれだけ。だから、息を呑んでみてしまう。
原三渓は下村観山を支援したが、今村紫紅(1880~1916)の才能も
高く評価していた。ここには三渓が所蔵していた紫紅が数点あり、その一枚が
‘潮見坂’。縦長の画面いっぱいに広がる南画風の明るい色合いが目に心地いい。
そして、小茂田青樹(1891~1933)の特徴である超リアルな描写と
最初に遭遇したのが‘ポンポンダリア’。この絵によりこの画家の存在を知った。