藤田嗣治(1886~1968)の回顧展は2年前東京都美で行われたもの
を含めて5回くらいでかけた。また、パリの市立近代美に展示してある出世
作‘寝室の裸婦キキ’や迎賓館にある大きな壁画にも遭遇するという幸運に恵
まれた。そのため、藤田の作品がどこの美術館にあるかはおおよそ頭の中に
入っている。
ポーラ美は藤田を楽しむためには忘れてはならない美術館のひとつ。これま
でお目にかかったのはほとんどが心を和ませてくれる子どもの絵。子どもが
たくさん登場する‘誕生日’、‘校庭’、仕事をする人や職人の役を演じる子ども
を描いた‘床屋’とか‘風船売り’、‘姉妹’、また動物が主役の寓話画‘ラ・フォン
テーヌ頌’もおもしろい。
昨年大回顧展があった岸田劉生(1891~1927)、ここにある‘麗子
坐像’も数多く描かれた麗子像シリーズに欠かせない主要ピース。このとき
麗子は6歳。5歳の麗子像が東近美に展示してあるが、1年経つと髪もおさ
げになり幼い子の肖像画らしくなっている。
安井曾太郎(1888~1955)は上高地の風景を描いた‘霞沢岳’、盟友
梅原龍三郎(1888~1986)は‘裸婦結髪’も揃えているのでポーラの
洋画コレクションにはぬかりがない。感心させられる。
今から12年前、八重洲のアーチゾン美(旧ブリジストン美)で待望の
岡鹿之助展が開催された。このときポーラにある岡鹿之助(1898~
1978)がなんと10点出品された。お馴染みの川や雪の景色、発電所、
燈台、花などが次々と目の前に現れる。ええー、ポーラはこんなにもってい
たの!という感じ。そのなかで魅了されたのが胸にじーんとくる‘雪’と鮮や
かな色彩が花びらを輝かせている‘献花’。