箱根の仙石原にあるポーラ美はこれまで2度でかけた。ここのコレクション
の自慢はなんといっても印象派。たしか3つくらいの部屋に飾ってあったよ
うな記憶がある。そのなかで一番惹かれているのがスーラ(1859~
1891)の海景画‘グランカンの干潮’。2年前西洋美で開催されたジャポニ
スム展にも出品された。作品の数が少ないスーラの絵が日本の美術館でみれ
るのはスゴイことである。
この絵が強く胸に刻まれるのは浜辺に打ち上げられた帆船の大きく傾いた姿。
どうしてこんな傾いた船にスーラは関心を寄せたのか、これを解くカギとな
る絵がある。それは同じ年、このノルマンディ―の漁村にある奇岩が描かれ
た‘グランカンのオック岬’(ロンドン テートモダン)。蟹の爪を連想させる
巨大な岩の曲線がどこか傾いた帆船と響き合う。
スーラと一緒に点描画の道を進んだシニャック(1863~1935)は
スーラと死別して以降は点描のサイズを大きくして川や港の光景を明るく
生気にあふれる情景として表現した。‘オーセールの橋’では多用された紫色の
点描が光をキラキラ輝かせている。
日本の美術館にもルノワール(1841~1919)の描いた愛らしい少女
や女性の絵がある。すぐ思いつくのはア―ティゾン美(旧ブリジストン美)、
三菱一号館美、山形美、岐阜県美、そしてポーラ美。これがビッグファイブ。
ポーラにはこのレースの帽子を被った少女のほかに目を奪われる裸婦もある。
これにモネ(1840~1926)の定番‘睡蓮’が加われば、一瞬オルセー
の展示室にいるような気になる。