岐阜県美はこれまで2回訪問する機会があった。最初は名古屋に仕事で2年
ほど住んでいた頃で27年前。そして、2006年ここで待望の前田青邨展が
行われたのでわざわざ新幹線ででかけた。でも、岐阜市のどのあたりに美術
館があったかは覚えていない。
浦島太郎の話は桃太郎とともに子供のころにインフットされた童話の定番。
竜宮城で美女と美味しい食べ物に囲まれるのだから誰だってそんな体験をし
てみたいと思う。それがもし実現したらどんな光景になるのか、山本芳翠
(1880~1901)の描いた絵をみると楽しさが倍増する。ところが、
この浦島太郎はぱっとみると女性にみえる。亀の甲羅にのせた足はたしかに
男の足だが、風でながれる長い髪と綺麗な顔立ちはどうみても女性。
不思議な浦島像の狙いは何だったのか。芳翠は美形の女性を描くのがとても
上手い。パリに留学していたときの作品‘裸婦’にも大変魅了される。
日本画のビッグネーム前田青邨(1885~1977)は岐阜県中津川市の
出身。東京での回顧展をずっと願っていたが、想定外の岐阜県美と浜松市美
での開催。全点みたいので大半がダブルのは目をつぶって浜松にも足をのば
した。‘ラ・プランセス’は高松宮妃の肖像。青邨は‘夜会服姿の妃殿下の華や
かで気品のある風格と雰囲気を描きたかった’と語っている。
愛知県に生まれ、岐阜で育った川合玉堂(1873~1957)の2点もこ
このお宝絵画。画面の右半分で樹木を傾かせて俯瞰の視点をつくる構図と
長谷川等伯の‘松林図’を彷彿とさせる静寂さが心に響く‘深林宿雪’はお気に入
りの一枚。そして、紅葉の赤が印象深い‘日光裏見滝’もぐっと惹きこまれる。