‘アニエールの水浴'(1884年 ロンドンナショナルギャラリー)
‘ポーズする女性たち'(1888年 フィラデルフィア バーンズ・コレクション)
‘グランド・ジャット島の日曜日の午後'(1886年 シカゴ美)
‘シャユ踊り'(1890年 オッテルロー クレラー=ミュラー美)
絵画とのつきあいが長くなってくるとどういうわけかルーティンのようなこ
ともできてくる。そのひとつが‘西洋美術史'といったような全体の流れがわ
かる本を定期的にみること。これには展覧会でみた名画がこうした美術本に
載っているとその鑑賞体験が特別なものだったとわかり感激がさらに増すと
いう効果がある。
手元にあるスーラ(1859~1891)の本をみるたびに満足感が高まっ
ていく。運よく主要作品をだいたいみたからである。はじめてスーラの点描
画をみたのは1990年海外出張でNYとロンドンに行ったとき。メトロポ
リタンでは‘サーカスの客寄せ'をこれがあのスーラの点描画かと、息を呑ん
でみた。そのあと出かけたロンドンのナショナルギャラリーで遭遇した‘アニ
エールの水浴'はまず絵の大きさに驚かされた。縦2m、横3mの大きな画面
に河岸でくつろぐ人物たちにフォーカスした風俗風景画がどんと飾ってあっ
た。でも、じっくりみたら点描画全開ではなく点描になっているのは部分的
にとどまっている。なにかはぐらかされた感じだった。
その4年後、東京の西洋美でバーンズ・コレクションが公開されスーラの
‘ポーズをとる女たち'がマティスの‘生きる喜び'とともに目玉作品として人気
を集めた。質の高いすばらしいコレクションと縁があったのだからスーラの
コンプリートを目指してみようと思った。その大きなターゲットが‘ポーズを
とる女たち'のなかに画中画として描かれているあの有名な‘グランド・ジャッ
ト島の日曜日の午後'。
その夢が叶ったのは2008年、この絵はコレクターの遺言により門外不出
となっているためシカゴ美に足を運ばなくてはみれない。当時シカゴを含む
アメリカ大都市ツアーはほとんどなかったが、A社が企画してくれしかも
シカゴ美に入館するという理想的な行程が組まれていた。絵の前では最高の
気分だった。シカゴ美でスーラの最高傑作を見ているのだ!ミューズに感謝。
点描画はあまり近づくと多くの色の斑点がビジーになるので適当に離れてみ
るのが一番。音が消え光と静けさにつつまれた行楽地。目に焼きつけた。
2011年に訪問したオランダ、オッテルローにあるクレラー=ミュラー美。
ここはゴッホの一大コレクションが楽しめるが、スーラも見逃せない。みた
くてしょうがなかったのが‘シャユ踊り'。スーラは静謐な絵というイメージが
この踊りで破られた。スーラちゃん、ロートレックのポスターを連想させる
ナイトクラブの乱痴気騒ぎ踊りだって描けるじゃない、スゴイよ。