春に東博本館で行われた‘日本美術の名品’(5/3~6/2)はすでにみているものが多かったので、永徳の‘檜図屏風’や雪舟の‘秋冬山水図’などをさらっとみるつもりで展示会場に入った。こういうときに嬉しいことがおこるとその展覧会は深く胸に刻まれる。
嬉しいことは二つある。ひとつは宮川香山のやきもの‘黄釉銹絵梅樹図大瓶’(1892年 重文)がでていたこと。この大瓶はお気にいりの作品でこれまで何度もお目にかかっている。だから、特別感動が大きいということはない。何が嬉しいかというとミニ図録に図版が載るのでこれからはいつでもこの香山の傑作をながめられるから。これまでこのやきものの絵葉書がどういうわけかミュージアムショップに用意されてなかった。このもやもや感がやっと解消された。
もうひとつのサプライズは長澤芦雪(1754~1799)の‘花鳥遊漁図巻’。この絵の情報はまったくゼロ。過去に2度芦雪の回顧展を体験したが、この図巻はかすりもしなかった。文化庁の所蔵となっているが、これまでなぜ展示されなかったのだろうか。長さ11mの巻物に芦雪お得意の雀や可愛い犬、そしてたくさんの鯉が描かれている。今年は芦雪の大当たり!‘奇想の系譜’とこの名品展で新たな作品に2点も遭遇した。
現代アートの分野で新鮮な出会いがあった。イギリスのアーティスト、ジュリアン・オピー(1958~)のポスターのような作品‘ニューヨークの通行人’。人物の表現はイベント会場の案内マークや街の交通標識の類と変わらない。オピーは大都市における人々の歩く姿を巨大な画面に平板に描いたり、動画を使って表現する。余計なものを除き人物の動きに特化してシンプルな造形でリズミカルに描写するところがおもしろい。
バスキア(1960~1988)の作品はこれまで何点かみたことがあるので、絵の特徴はインプットされていたが、彼が日本に22歳のころから何度もやって来ていたことは全然知らなかった。作品のなかに‘100YEN 200YEN、、、’が記されているのは?奇妙に思っていたが、あとで図録を呼んで意外にも日本のことにいろいろ興味をもっていたことがわかり合点がいった。インパクトの大きかったのはZOZOの前社長前澤氏が所蔵する絵。猿が歯をむきだしにしているイメージが強い。