美術館が芸術家の回顧展を主催するときは生誕○○年とか没後○○年とかに
絡めて企画することが多い。梅原龍三郎(1888~1986)は昨年が
生誕130年で2016年だと没後30年にあたっていた。だが、どこの
美術館でも梅原龍三郎展は行われなかった。何事も思い通りにはいかなも
の。粘り強く待つしかない。
‘少女’はぱっとみると10人いれば10人とも少年の肖像画と思うにちがい
ない。でも、このモデルは梅原の孫娘。解説文を読むとじわじわ少女にみ
えてくるが、頭の切り替えは難しい。以前プーシキン美が所蔵するゴーギ
ャンの絵で描かれた人物をずっとタヒチの男と勘違いしていた。肖像画で
はときどきそういうことがある。
島根県の三隅町に生まれた石本正(いしもとしょう 1920~2015)
の‘香’は画家の横でモデルをつとめる裸婦をながめているような気分になる。
同じようなリアリティの強い裸婦像を描く画家というと杉山寧と加山又造が
いる。興味深いのは洋画家より日本画家のほうが大胆で生々しい表現をす
ること。ほかの風景画などとの落差が大きいのではじめはドギマギする。
ここにはウッドワンにあるのと同じような白鳥の絵がある。これは杉山寧
(1891~1961)の漢字一字シリーズの一枚。‘蕩(とう)’という
タイトルがついている。こういう絵を毎日みれたら言うことないが。
福田平八郎と同じく須田国太郎(1909~1993)の絵が多くある。
10点くらいもっている。そのなかで忘れられないのが怖い怖い‘黄豹’、
もしこの豹に遭遇したら生きた心地がしないだろう。