Quantcast
Channel: いづつやの文化記号
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4049

美術館に乾杯! オルセー美 その四

$
0
0

Img_0001_20190622222401
    ルパージュの‘干し草’(1877年)

Img_20190622222401
    ボヌールの‘ニヴェルネ地方の耕作’(1849年)

Img_0002_20190622222401
    ブルトンの‘落穂拾いの召集’(1859年)

Img_0003_20190622222401
    カザンの‘一日の仕事の終わり’

オルセーへ何度か足を運んでいると、フランスの農民画家はバルビゾン派の
ミレー(1814~1875)だけではないとわかってくる。自然主義の
ルパージュ(1848~1884)の‘干し草’は絵の前に立つ回数が増えるに
つれ長くみるようになった。農村では仕事のあいまの休憩はそこいらの地べ
たときまっている。手と足をだらんと前にのばしほっとするような表情をみ
せる若い女性が目に焼きついている。昨年5月コペンハーゲンのニューカー
ルスベア美でルパージュの‘乞食’という大きな絵をみた。たいした画家だと
いう認識が強くなっている。

ローザ・ボヌール(1822~1899)は動物画を得意とした女性画家。
重量感のある牛たちが農地を耕す様子が生き生きと描かれている‘二ヴェルネ
地方の耕作’に大変魅了されている。昔は日本の農村でもこんな光景がみら
れたが、今はもうみれないだろう。このボヌールという画家の作品はオルセ
ー以外でみたことがない。ほかに描かれた動物は?やはり牛とくれば馬か。

ブルトン(1827~1906)の‘落穂拾いの召集’は2003年、
Bunkamuraで開催されたミレー展に出品された。ミレーの同名の絵とちがっ
て、ここには大勢の農婦たちが集まっている。そのなかには若い娘もいる。
そのなかで視線が集中するのは中央の3人。なんだかオペラの舞台で人々が
静々と行進する場面をみているような感じ。ちょっと硬い雰囲気なので落穂
拾いをつい構えてみてしまう。当時サロンではこういう画風が高く評価さ
れた。

シャヴァンヌ(1824~1898)の‘貧しい漁夫’とイメージがかぶるの
がカザン(1841~1901)の‘一日の仕事の終わり’。赤子に乳をやる
妻を無言でいたわる農夫の姿が心を打つ。1回目のオルセーではまったく
みたという実感がなかったが、日本で立ち尽くしてみていた。この寡黙な
夫婦の立ち姿は農民の厳しい暮らしを如実に物語っている。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4049

Trending Articles