パリ大改造と同じようにウィーンでも皇帝フランツ・ヨーゼフが都市改造を
おこない1860~90年にかけて環状道路(リングシュトラーセ)やその
沿道にオペラ座、ブルク劇場、美術史美術館などが出現した。国立新美で
開催中の‘ウィーン・モダン’(4/24~8/5)には当時のウイーンの活気や
人々の華やいだ気分を伝える作品がいくつも展示されている。
クリムト(1862~1918)は若い頃はこんなオーソドックスな絵を描
いていたのかと思わせるのが‘旧ブルク劇場の観客席’。オペラやバレエをヨ
ーロッパの劇場で楽しむという習慣がないので劇場の大きさやどんな構造に
なっているのか実感がないが、TVのオペラ番組ではこういう馬蹄形の観客席
がよくでてくる。
レンツが描いた‘オペラ座付近のリングシュトラーセ’はウィーンのベルエポッ
クの様子がストレートに伝わってくる。この街は2度訪れたが、自分の足で
歩いていないので、主要な建築物の位置と道路の流れが十分把握できてない。
そのため、オペラ座のまわりがどうなっているか記憶があやふや。ウィーン
フィルのニューイヤーコンサートへ毎年出かけているクラシック愛好家なら
このあたりは馴染みの場所かもしれない。羨ましい。
今回大変惹きつけられた女性画が2点あった。ネオ・バロックの画家、マカ
ルト(1840~1884)の‘メッサリーナ役の女優シャルロッテ・ウォル
ター’と分離派のクルツヴァイルの‘黄色いドレスの女性’。女優シャルロット
の肖像をみてボストン生まれのサージェント(1856~1925)が描い
た‘マクベス夫人に扮するエレン・テリー’(1889年、テート・ブリテン)
を思い出した。ともに堂々とした女優の姿に強いオーラを感じる。
‘黄色のドレスの女性’には思わず足がとまった。両手を真横にしてソファの縁
をつかむポーズは一度みたら忘れられない。そして、目に飛び込んでくる
黄色の衣装。腰から下は一瞬黄色の蛾を連想した。