東京都美で行われている‘クリムト展’(4/23~7/10)をみてきた。
この前のGWに東芸大美のコレクション展に足を運んだ際、東京都美は大盛況
でたくさんのクリムトファンが押し寄せていた。それに比べると館内は楽だ
と思うが、外国人も多くかなり賑わっていた。
ゴッホやフェルメール同様、クリムト(1862~1918)は展覧会のキラ
ーコンテンツ。しかも今回は作品の数が25点以上というのだから申し分のな
いラインナップ。だから、入館するとクリムトをトコトンみるぞ、という気に
なる。そのなかで強い磁力を放っているのが妖艶なまなざしが心をざわつかせ
る‘ユディトⅠ’、黄金装飾を尽くして描かれたファムファタルにまた日本で会
えるのだから、クリムトは本当に日本との相性がいい。ユディトの顔ばかりみ
ていると右下にちょこっと描かれているホロフェルネスの首を見落とすので
注意が必要。
初見の作品は予想以上に多くあったが、もっとも惹かれたのが‘女ともだち
(姉妹)’。短冊を大きくしたような縦長の画面に口紅と頬紅が白い顔に浮き立
つ女性が二人描かれている。ひとりは正面向きでもうひとりは横向き。艶やか
なところは画面の上部のここだけ、ほかは濃いこげ茶の衣装と同じ色や白を
ベースにしたモザイク模様で占められている。この抑制気味の色使いはゾクゾ
クっとさせる官能的な雰囲気をバランスさせている。感心しながらみていた。
チラシで大きく扱われていた‘女と三世代’は所蔵しているローマ国立近美で
2度お目にかかった。1.7mの正方形の画面の中央に顔を横に曲げ幼子を抱
いている女性と髪で顔を隠したお婆さんが描かれている。視線がむかうのは三
人の姿だけでなく母親の髪にまであしらわれた小さな花びら模様と背後の沸き
立つようにでてくる紫、青、黄金の点々。そして、それ以外のところは‘女とも
だち’と同様にこげ茶色がフラットに塗られている。
エロチシズムにあふれる裸婦図とはかけ離れた印象を与えるクリムトの風景画。
4点あるなかで‘アッター湖畔のカンマー城Ⅲ’と嬉しい再会を果たした。かなり
昔だが、はじめてウイーンを訪れたときベルヴェデーレ宮でみて大変感動した。
正方形のキャンバスに描かれた風景画というのは印象派の風景画ではみない。
興味深いのは湖畔に映る木々の葉と城がスーラの点描画のようにみえること。
印象派好きだからこういう絵には敏感に反応する。