
ティツィアーノの‘アベルを殺すカイン’(1542~44年)
団体ツアーでヴェネツィアを観光するときはアカデミア美への入館は行程に
なく、まずサン・マルコ寺院とドゥカーレ宮殿に行きそのあとはヴェネツィ
アガラスのお土産店へ直行するという流れ。そのため、ヴェネツィア派に
関心がある人はドゥカーレ宮殿でティントレットの巨大な絵やヴェロネーゼ
の天井画をみるだけでは思いの丈は満たされない。
だから、自由時間を使ってアカデミア美に向かい感動の袋が目いっぱい膨れ
たところで幸せのドーパミンの大放出とあいなる。そして、‘ベリーニやティ
ツィアーノ、ティントレットもいいじゃない!’とルネサンス絵画の楽しみ方
の幅が広がってくる。そういう方にとって2度目以降のヴェネツィア訪問の際、
名所まわりのオプションとして価値があるのはペギー・グッゲンハイム美か
ら歩いて5分くらいのところにあるサンタ・マリア・デラ・サルーテ教会。
ここでティツィアーノ(1485~1576)が4点みられる。‘玉座の聖
マルコと聖人たち’と聖具室にある3点の天井画‘イサクの犠牲’、‘アベルを殺
すカイン’、‘ダヴィデとゴリアテ’。とくに印象深いのが迫真的な場面が動きの
ある構図で演出されている‘イサクの犠牲’。宙を舞いアブラハムを制止する
天使の姿はティントレット(1519~1594)の絵をみているよう。
そのティントレットは‘カナの婚礼’を描いたものがある。いつものように遠近
法の焦点を左にずらす構成が宴会の大きさをみせてくれる。
この次のヴェネツィアがいつになるかまだ実行計画はないが、どこの教会を
目指すかはおおよそ決めてある。真っ先に向かうのはドゥカーレ宮殿の前方
にみえるサン・ジョルジョ・マジョーレ教会。ここにティントレットの傑作
‘最後の晩餐’がある。これは最後に残っているティントレットの欠かせない
ワンピース。なんとしても目になかに入れたい。ほかに4つくらいヴェネツ
ィア派が楽しめる教会がある。時間があれば貪欲にまわるつもり。