デ・キリコ(1888~1978)のイメージをつくった絵がペギー・グッ
ゲンハイムにある。‘詩人の郷愁’はポンピドー・センターにある‘ギョーム・
アポリネールの肖像’と対をなす作品。すごくカッコいいなと思うのはサン
グラスをかけた古代の胸像、はじめてこれをみたときは映画‘ゴッドファー
ザー’のイメージと重なった。キュビスムや未来派の擁護者となった詩人アポ
リネールはデ・キリコも絶賛したので、画家は詩人を古代ギリシャの勇士に
似せて描き持ち上げたのかもしれない。
シュルレアリストのマグリット(1898~1967)はデ・キリコの形而
上絵画に強い影響を受けた。デ・キリコが見慣れた街を建物や人物がつくる
長い影を描き静謐でどこか不思議な世界に変質させたのに対し、マグリット
は謎めいた要素を薄くし、意表を突くモチーフの組み合わせのおもしろさを
表出した。代表作の‘光の帝国’は空の白い雲が昼間そのものでこれとどっ
ぷり夜の暗闇につつまれた邸が一緒に描かれているのでハッとする。でも、
同時になぜこれがシュールなの?という感じもする。夕暮れ時はこんな光景
によくでくわすことがあるからである。
ブローネル(1903~1966)に開眼したのはパリ市立近代美でそのシ
ュールな絵画や彫刻をみたとき。‘ショックの意識’にみられる人物や鳥などの
平板なフォルムは先史人類が洞窟の壁に描き残した馬や牛や狩人を思い起こ
させる。また、小さいこどものお絵かきでも同じような絵ができあがりそう。
絵画だけでなく彫刻やオブジェも制作した未来派のボッチョーニ(1882
~1916)にはバッラ、セヴェリーノ同様、深い思い入れがある。ここで
は絵画5点と彫刻2点が目を楽しませてくれた。‘疾走する馬と家の躍動’は
どの部分が馬でどこが家かはっきりつかめないが、突起物の形から十分にス
ピード感は感じられる。