ヴェネツィアではティツィアーノやティントレットら錚々たるヴェネツィア
派の作品とお目にかかれるだけでなく現代絵画も存分に楽しめる。ひとつが
アカデミア美のすぐ近くにあるペギー・グッゲンハイム美で、もうひとつは
まだ縁がないカ・ドーロの斜め前にある近代美。前回、クリムトがある近代
美を忘れるという大ポカをしてしまった。その悔いの痛みをずっと引きずっ
ている。
ペギー・グッゲンハイム美は大運河に面するこじんまりとした邸宅美。
コレクターのペギー・グッゲンハイム(1898~1979)が住んでいた
邸が現代美術を展示する美術館になった。いくつかある部屋をまわっていて
思わず足がとまるのがモディリアーニ(1884~1920)の‘フランク
・バーティー・ハヴィランドの肖像’、ハヴィランドは裕福なコレクター、
この絵が描かれたのは彫刻を諦めて絵画で生きていく覚悟を決めた直後の頃。
点描のような色使いがとても斬新でモデルの内面性がよくでている。
ここにはイタリア未来派の作品がしっかり揃っている。とくに目を惹くのが
セヴェリーノ(1883~1966)の‘青い服の踊り子’、上のほうをじっ
とみているとピカソのキュビスムを連想させる女性の顔がとらえられる。
未来派はスピードの表現が真骨頂なので日本の千手観音像のように踊り子の
手が2,3本動いている。これはおもしろい!
メッツジンガーの‘自転車レースのトラック’は未来派らしいモチーフ。バッラ
(1871~1958)は犬の足や楕円をぐるぐる回しダイナミズムを印象
づけ、メッツジンガーは競技自転車の車輪を選手がフル回転させゴールをめ
ざす場面をどアップで描いた。