ジョルジョーネの‘人間の三世代’(1500年)
ジェンティレスキの‘ユディット’(1614~1620年)
アッローリの‘ホロフェルネスの首を持つユディット’(1620年)
ムリリョの‘聖母子’(1650年)
画家の価値は独自の表現にどれだけ到達できるかで決まるが、その個性的な描き方が画家の頭のなかにぽっとわきでてくるというわけでもない。偉大な画家は先達から数多くのことを学んでいる。では、イタリアで人気の高いカラヴァッジョ(1571~1610)の先達は誰かと想像をめぐらすと、ヴェネツィア派のジョルジョーネ(1476~1510)にいきつく。
ピッテイ美にある‘人間の三世代’をじっとみていると宗教性を薄くした風俗画として人々を写実的に描いたカラヴァッジョの作品と共通する雰囲気が漂う。左でこちらをみている老人の生感覚は半端ではないのですっと絵のなかに入っていける。
カラヴァッジェスキのひとりジェンティレスキ(1593~1652)の‘ユディット’も忘れられない一枚。この稀代の女流画家はユディットをテーマにして何点も描いているが、顔を横にむけ何かを注視しているユディットの姿からは敵将の首を刎ねたあとの精神の高ぶりがぴりぴり伝わってくる。
一方、アッローリ(1577~1621)の描いたユディットはホロフェルネスの首を手にして正面を向いている。美形の女性には冷たい魔性の女の匂いがして、その大胆な行動がにわかには信じられない。ええー、あの美女が怖い親分の首をちょん切ったの!という感じ。何年か前、女子大生が年配の女性を殺した事件があったが、彼女の複雑な心理状態に戸惑った。
スペインの画家ムリリョ(1617~1682)の‘聖母子’はラファエロ同様、心をとらえて離さない。ここのコレッジョの聖母子があったら最高なのだが。