‘ヴェネツィアの景色’(1835年頃 NY メトロポリタン美)
‘月明かりに石炭を積み込む水夫たち’(1835年 ワシントンナショナルギャラリー)
現在、東京都美で開催中の‘ターナー展’(10/8~12/18)は会期が残り2週間となった。先月日曜美術館で取り上げられたので、観客の数はグッとふえているかもしれない。
回顧展があると心が弾むのは画家の作品が沢山みれるだけでなく、これに合わせて制作されたTV局の美術番組からもいろいろな情報が入ってくるから。ターナー(1775~1851)の場合、9月に‘美の巨人たち’が‘戦艦テメレール’の制作の謎を解き明かしていたし、つい2週間前にも日曜美術館で松岡正剛さんがターナー作品の深い読み解きをしてくれた。
そしてもうひとつターナーに最接近するのに役立ったものがある。それは展覧会の図録にオマケとして添付されている地図。これは大変気が利いていて出品作に描かれた風景のある場所がイギリス国内、フランス、スイス、イタリアのどこにあるかが一目でわかるようになっている。お蔭でターナーが追い求めた崇高な自然美や大気や光をよりイメージしやすくなった。
わが家は今年のはじめアメリカで美術館めぐりをしたため、西洋絵画のビッグネームが何人も当たり年になった。その双璧がともに東京都美で回顧展が行われたエル・グレコとターナー。日本で多くの作品に出会っただけでなく、アメリカでも予想を上回る作品が姿を現してくれた。
ターナーの収穫はなんといってもフィラデルフィア美で念願の‘国会議事堂の炎上’に遭遇したこと。さらにワシントンナショナルギャラリーでも08年のとき工事のため展示されてなかった‘月明かりに石炭を積み込む水夫たち’と‘ヴェネツィア、税関舎とサン・ジョルジョ・マジョーレ’もみることができた。
ボストン美にある有名な‘奴隷船’とか日本に昨年やって来た‘ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む’(メトロポリタン美)、そしてNYのフリックコレクションが所蔵する5点のターナー作品は以前みたので、これでアメリカの美術館にあるターナーは済みマークがつけられる。ここまでくるのに長い時間がかかったのでちょっと感慨深い。
今、ターナー旅行地図をみながら名画の数々を楽しんでいる。