今年は5月にデンマークを旅行しシェークスピアの‘ハムレット’の舞台となったクロンボー城へ行ったので、ミレイ(1829~1896)の最高傑作‘オフィーリア’への思い入れがさらに深まった。ラファエロ前派ではロセッティの‘プロセルピナ’とこの絵がダントツの一位。
‘オフィーリア’は日本には2008年の回顧展(Bunkamura)と2014年のラファエロ前派展の2度貸し出された。だから、ロセッティ、バーン=ジョーンズ、ミレイのビッグ3についてはめぼしい傑作はわざわざイギリスへ行かなくても楽しめたことになる。これは日本が世界に誇る美術大国であることの証。
‘両親の家のキリスト(大工の仕事場)’で主役は画題上は釘で手を傷つけた少年イエスだが、視線が向かうのは右でイエスの傷を洗うためたらいに入れた水を運んできた洗礼者ヨハネ。心配そうに横目でイエスをみる表情がとてもいい。この絵から普通の人たちを登場させて宗教画を描いたカラヴァッジョを思い出した。
ハント(1827~1910)も1948年に結成されたラファエロ前派のメンバー、‘良心の目覚め’は意味深なタイトル。男の歌を聴いているうちに愛人が小さい頃の純な気持ちを思い出して悔悛するというのだからいい話。まさに近代のマグダラのマリア。そう思ってみると女性は輝いてみえる。でもそれは一瞬だけ。ヴィクトリア朝では道徳を重視していたのでもってこいの絵といえるが、現実は道徳は乱れ愛人が多くいたというメッセージにもなっている。
ロセッティの師であり友人でもあったブラウン(1821~1893)は宗教的なテーマや風景画などいろいろ描いた。水彩画の‘イギリスの見納め’はラファエロ前派の彫刻家ウールナーのオーストラリア移住に刺激を受けて制作されたもの。なにか思いつめた表情をみせる男女の姿が印象的。