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Channel: いづつやの文化記号
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パワーにあふれ工芸的な香りのする山雪ワールド!

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Img_0002_2     ‘老梅図襖’(1646年 NY メトロポリタン美)

Img_0001_2     ‘群仙図襖’(1646年 ミネアポリス美)

Img_0003_2     ‘雪汀水禽図屏風’(重文 右隻 17世紀前半) 

Img_0004_2     ‘雪汀水禽図屏風’(左隻)

狩野山雪(1590~1651)に開眼する機会が過去に3回あった。そのひとつが08年NYのメトロポリタン美を訪問したときお目にかかった‘老梅図襖’。日本館のなかに小さな座敷がつくられ奥に飾ってあった。全体が暗く襖に最接近できないので細かいところはよくつかめないが、角々と曲がる太い梅の枝に強い衝撃を受けた。と同時にこんな梅が実際に存在するの?ということに気が回りだした。

この‘老梅図襖’が展示されている。‘妙心寺展’のときにも出品されたが、今回の里帰りには嬉しい演出がなされていた。この襖絵はもともと妙心寺塔頭 天球院にあったもの。そして裏側にあったのが現在ミネアポリス美にある‘群仙図’。アメリカに渡る前までは二つは一緒に所蔵されていた。アメリカの東部と中部にあるこの二つの襖絵がこの展覧会で同時にみれることになった。流石、京博、やってくれました!二つが表裏の状態になるのは50年ぶりという。これが回顧展の醍醐味。

3度目の対面となる‘老梅図’、この度時間かけてみたのは強いインパクトを持った太い幹や枝より細い枝のほう。よくみると脇役の細い枝が横や斜めさらには真下、垂直にのび、これにより画面に奥行きを与え立体的な空間が生まれている。

最後に飾ってある屏風‘雪汀水禽図’は7年前この回顧展が開かれている京博の平常展で遭遇した。このとき山雪のスゴさに体が震えた。再び対面していろんなことが思い浮かぶ。まず、右隻の松に積もった雪の描写、蒔絵箱に施された意匠をみているような感覚になる。とても気になるのが中央の岩。いく層にもできた穴はとてもモダンでシュールな造形、日本の伝統美である装飾性とシュールな造形感覚が一枚の絵のなかに同居しているのに違和感を感じない不思議さ。こんな体験はこれまでなかった。

右隻でも左隻でも目を奪われるのが銀が輝く波、このてかてか光る波の線は柴田是真が得意とした青海波塗をイメージさせる。そして、波のうねりかたはトポロジーの柔らかな曲面をみているよう。こういう装飾性豊かで洗練された波は宗達や光琳の‘松島図’とか加山又造の‘千羽鶴’で表現された波濤と合い通じるものがある。ほとほと感心する山雪の造形感覚、言葉を失ってみていた。


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