太田記念美では現在歌川広重(1797~1858)の没後160年を記念した回顧展(9/1~10/28)が開かれている。作品は前期(9/1~24)と後期(9/29~10/28)で総入れ替えし、全部で213点でてくる。
2007年には神奈川県立歴史博物館で没後150年展があった。10年毎に広重の特別展に遭遇できるのは嬉しいかぎり。この度は浮世絵の専門館での開催だから目に力が入る。今日の午前中に入館したが、来館者がどんどん増えていくので、開幕してから大勢の人が広重の風景画、花鳥画、美人画、戯画を存分に楽しんだにちがいない。
広重とのつきあいは長いから期待ははじめてみる絵に集中するが、流石は太田記念美。プラスαが続々と登場する。目をこらしてみたのは東海道五十三次の‘日本橋’の別ヴァージョン。静かな早朝を描いたものがお馴染みの絵だが、橋を渡ってくる大名行列の前方に多くの人数が描かれた‘行烈振出’は初版の2年後に摺られた。行列が迫ってくると皆大急ぎで道の脇に移動するのだろう。これはこれでおもしろい。
広重の名を一躍有名にした傑作‘東都名所 高輪之明月’を久しぶりにみた。満月をバックにして気持ちよさそうに飛んでいく雁の群れに思わず見入ってしまう。宗達&光悦の合作にたくさんの鶴が優雅に飛翔する作品があるが、広重の雁もこれと同様見るたびに魅了される。
初見の‘山海見立相撲 越中立山’の前では以前TVでみた中国の観光名所となっている奇岩が林立する山々を思い出した。山派ではないのでここに描かれた剣岳はとんとわからないが、構図のつくり方に惹かれて長くみていた。
今回の収穫のひとつが‘大井川歩行渡’、これもこれまで縁がなかったもの。輦台に乗ったり人足の肩車で川を渡る女がここにもあそこにもいる。ここでは旅人の主役は女たちで後ろのほうで人足の数が多い大名乗物が行き来している。タイムワープして肩車してもらいたくなった。