レジェの‘余暇 ルイ・ダヴィッドに捧ぐ’(1948~49年)
訪問した美術館の数が増えていくと美術館が自慢にしている作品の存在の多きさがよくわかるようになる。そして、画家が描いた作品をみるときそうした作品、つまり代表作が目の前にある絵の良さをはかる基準として働きだす。この絵はすばらしい出来栄えだが、あの代表作は超えていないな、といった具合い。
ポンピドーは名だたるブランド美術館だから、美術本に載っている傑作中の傑作が続々登場する。その一枚がレジェ(1881~1955)の‘余暇 ルイ・ダヴィッドに捧ぐ’、この絵はなんと1997年日本にやって来た。彫刻のような人物表現を前にして、これがレジェの代表作か、と夢中になってみた。
大人の男女が4人、そして女の子と男の子、皆正面を向いている。ピクニック気分を象徴するのは2台の自転車と子どもがもっている花。さらに空に飛び交う白い鳩が姿をみせると、余暇を200%エンジョイしている家族は自然からも祝福されているようにみえる。‘ルイ・ダヴィッドに捧ぐ’は一体何?ダヴィッドが描いた‘マラーの死’が地面に腰をかける女性のポーズとからんでいるのは事実だが、絵のイメージにはまったくかかわらない。この際忘れてみるほうが楽しい。
‘コンポジション 2羽の鸚鵡’はびっくりするほど大きな絵、縦4m、横4.8mもある。2006年のときミュージアムショップで‘ポンピドーの名作100選’という名がついた図録(英語版)を購入した。この本で選ばれているレジェは‘余暇’ではなくて超大作の‘2羽の鸚鵡’とキュビスム風の‘結婚式’、これだけ大きいとレジェの彫刻を思わせる似たような人物が目に焼きつく。また遭遇したい。
欧米の美術館をまわって気がつくのはルオー(1871~1958)の絵に出くわさないこと。NYのMoMAにもボストン美にもルオーがあることはわかっているのに、なぜか展示されてない。アメリカ人には暗くて重い画風なので人気がないのだろうか。だから、ポンピドーでルオーと会うのは貴重な鑑賞体験。ここには4,5点あるが心を打つのは‘傷ついた道化師’や‘鏡の前の娼婦’。
ルオーの情報をひとつ、パナソニック汐留ミュージアムでは開館15周年を記念して‘ルオー展’が開催される。会期は9/29~12/9 目玉の作品としてポンピドーにある‘ヴェロニカ’や‘聖顔’がやって来るのだからたまらない。再会が楽しみ!