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Channel: いづつやの文化記号
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待望の‘藤田嗣治展’! その一

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Img_0002     ‘カフェ’(1949年 ポンピドーセンター)

Img   ‘エミリー・クレイン=シャドボーンの肖像’(1922年 シカゴ美)

Img_0003     ‘美しいスペインの女’(1949年 豊田市美)

Img_0001     ‘人魚’(1940年)

現在、上野の東京都美で開かれている‘没後50年 藤田嗣治展’(7/31~10/8)をみてきた。藤田嗣治(1886~1968)の回顧展をみるのは今回で5度目。これだけ出かけてるのは藤田の絵に大変魅了されているから。

チラシによると‘質量ともに史上最大級の大回顧展’という力強い訴求。一般の物売りだと大げさなに盛ったキャッチフレーズはよくあることだからそう驚かないが、展覧会ではまじめに展示内容のスゴさを伝えていることが多い。作品に自信があるときは主催者のどや顔はこういうフレーズに変わる。

作品をみるとその通りだった。東京都美は相変わらずホームランを打ち続ける。本当に感心する。出かける前は図録を買うのはやめて絵葉書で済ますつもりだったが、初見の作品が続々登場するのでそうもいかなくなった。

どうしても最初に載せたいのがチラシにどんと使われている‘カフェ’。この絵は3つのヴァージョンがあり、ポンピドー蔵のこの絵は2度目の来日。ドガの描いた男女のいるカフェの絵ほどうら寂しくひんやりしてないが、この女性はなにか心配事があり気が晴れない様子。

後ろにいる2人の男性の後ろ向きと横向きに対して、手を顎にあててぼんやりしている女性は真正面からとらえられている。仮に女性だけがこのポーズで描かれたものを想像してみると、3人が登場する場面のほうが女性の内面により肉薄できる。カフェには同じ時間が流れていて男性には平穏に進むのに女性には重苦しい雰囲気が固定されたまま。そんな感じがよく描かれている。

2008年シカゴ美でみた‘エミリー・クレイン=シャドボーンの肖像’と再会した。当時、美術館感想記にこの絵を紹介したかったのに絵葉書がなく写真が撮れなかったため、それが叶わなかった。これは藤田36歳のときの作品。背後に銀箔を使用するなどとても見栄えのする肖像画に仕上がっている。

‘カフェ’同様、藤田がNYに滞在しているときに制作されたのが‘美しいスペインの女’、この絵はどういうわけか過去の回顧展に出品されなかった。海外の美術館がもっているのではなく豐田市美にあるのだからいつかでてくると思っていたが予想外に時間がかかった。図版でみるより数倍いい。すっきり顔の美しい女性だった。

初見ではっとしたのが1940年に描かれ二科展に出品された‘人魚’、こんな絵が藤田にあったとは!現在は香港在住の個人が所蔵している。こういう想定外の作品に遭遇するのが回顧展の醍醐味。収穫の一枚だった。


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