美術館をみてまわるとき、あまり広くない場所に多くの美術館が集中していると鑑賞の効率がよく体が疲れることもない。こういう理想的な配置になっているのはNYとスペインのマドリード。NYはもともと京都にように縦と横にできた通り碁盤のようになっているので街のなかの移動がとても楽だが、五番街には魅力的な美術館がいくつもな並んでいる。
メトロポリタンを中心にみると南にちょっと下ればホイットニーとフリック・コレクションがあり、北に向かって進むとグッゲンハイムやクリムトの作品が楽しめるノイエギャラリーにすぐ到着する。近現代アートについてはまずMETでポロックの大作やオキーフなどをみて目を馴らし、そのあとグッゲンハイムとホイットニーへ寄れば感動の袋はもうパンパンに膨れ上がる。
グッゲンハイムではゴーギャン(1848~1903)やゴッホ(1853~1890)は前菜のようなもの。ともに2点ずつ。METにあるゴーギャンのすばらしいコレクションと比べ数ではかなわないが、前景に描かれた男と馬の配置がとてもいい‘村の男と馬’と豚が2匹登場するタヒチの村の光景もしっかり楽しめる。
ゴッホは1888年に描かれた‘雪の風景’と翌年アルルを離れたときの‘サン・レミの山の風景’、療養先のサン・レミでゴッホは傑作‘星月夜’(MoMA)を描きあげたが、その1カ月あとに手がけたのが‘サン・レミの山の風景’、山が‘星月夜’にみられるような渦巻きが連続して山の斜面をかなりのスピードで降りている。
作品の数が少ない画家の場合、その貴重な絵が観れる美術館は強く印象に残る。グッゲンハイムでは嬉しいことにスーラ(1859~1891)が2点ある。‘鍬を持つ農夫’と‘農作業をする女たち’は小品だが、点描画なのでつい夢中になってみてしまう。