ニューヨーク5番街88丁目にあるソロモン・R・グッゲンハイム美
美術館のイメージがその建物の形からできあがっているのが2つある。パリのポンピドーセンターとNYのソロモン・R・グッゲンハイム美。メトロポリタンから北に向かって10分くらい歩くと到着するグッゲンハイム美、この巨大なカタツムリを思わせるユニークな建物を設計したのは20世紀を代表する建築家フランク・ロイド・ライト。
近現代アートをみる舞台がこういう超モダンな建築空間だと、作品との密着度が強くなくても気分がぐんと高揚し緩やかに傾斜する螺旋状の回廊をまわるうちにハイエンドのアートの通になったとつい錯覚をしてしまう。
展示されている作品の大半は抽象絵画や現代彫刻、オブジェだが、MoMAほど多くはないが印象派やポスト印象派などの絵画にも遭遇する。お気に入りの筆頭はピサロ(1830~1903)の‘ポントワーズの風景’、パリの北西にあるポントワーズに2年住んだときの作品でMETにも同じ年に描いたものがある。道にできた影などをみるとコローの風景画を連想するが、画面全体がとても明るくコローやクールベとモネの中間をいく風景画という感じ。
2点あるマネ(1832~1883)はともに女性の絵。マネには女性の後ろ姿を描いたものあるが‘鏡の前に立つ女性’はそのひとつ。このタイプの作品をみるたびにマネはどうして女性の顔をみせないのか思いを巡らす。
勝手な解釈はマネがプラドでみたベラスケスの‘ラス・メニーナス’との関連性。画面では画家の後ろに今描いている国王夫妻をみせているが、この現場に居合わせたわれわれはこの2人の後方に陣取り彼らの後ろ姿ごしにベラスケスや王女マルガリータをみていることになる。だから、マネはベラスケスのように人物の後ろ姿を描くことで見る者の存在を意識し奥行きのある画面をつくったのかもしれない。
セザンヌ(1839~1906)の‘腕を組む男’は静かな雰囲気だが、男の鋭い目力が印象に残る肖像画。男性を描いた肖像画では日本の安井曽太郎がふと頭をかすめる。