画集に載っている名画が目の前に現れると感激もひとしお。セザンヌ(1839~1906)の‘カード遊びをする人々’はそんな一枚。農夫が興じるカード遊びをセザンヌは全部で5点描いている。はじめにプレイヤーとそれをまわりでみている者も含め4,5人登場させたものを2点仕上げ、そのあと2人でやっているものを3点描いた。
METにあるのは2番目の作品。無表情でプレーに集中している3人を煙草を食わえた男が腕をくみじっとみている。今はしないが大学生のころからある時期まで麻雀を狂ったようにしていた。このカード遊びの静けさは麻雀でも同じ。いい手になると冷静を装うため場は沈黙が支配する。
風俗画の名手、ドガ(1834~1917)の‘菊のある婦人像’に大変魅了されている。ドガというとバレリーナの画家というイメージが強いが、この絵のようにドガは暮らしのなかでふとみせる女性の心の内を見逃さない。ドガは裕福な家に生まれたから、なにかと余裕がある。そのため、街でみかけた女性を小説家のような心情でみるようになったのかもしれない。
アメリカ人にもファンが多いルノワール、ここには‘海辺にて’、‘シャルパンティエ夫人と子どもたち’、‘ピアノにむかう2人の少女’といった画集でお馴染みの作品があるが、ぞっこん参っているのは1階正面の入場口を真っすぐ進むと見えてくる‘ロバート・リーマン・コレクション’に飾られている‘座っている浴女’、天使のような可愛い顔が忘れられない。
ロートレック(1864~1901)の‘ソファ’はどういうわけかまだ縁がない。2008年、2013、2015年、毎回必見リストに入れているのにいつもダメ。保存状態がよくないので倉庫から出さないのだろうか。消化不良の思いが続きそう。