ヨーロッパのブランド美術館では鑑賞後に寄るミュージアムショップに日本語に翻訳された美術館のガイドブックがだいたい置いてある。ルーブル、オルセー、プラド、ロンドンナショナルギャラリー、エルミタージュ、ウイーン美術史美、、、
ところが、アメリカは違っている。手元にあるのはメトロポリタンとワシントンのナショナルギャラリーだけ。日本で美術館展を何度も行っているあのボストンでさえ日本語版がない。シカゴ、フィラデルフィアも同様。2013年にはじめてフィラデルフィアに行ったとき、当然のこととして図録を購入する予定だったが、販売されていたのは分厚い英語版。専門書すぎたので買うのはやめた。だから、館内で写真撮影したものが図版代りになっている。
幸いなことに手元の美術書にはフィラデルフィア美蔵の作品が頻繁にでてくる。アンリ・ルソー(1844~1910)の‘カーニヴァルの夕べ’は初期の傑作としてTASCHEN本の最初にでてくる。ここにはルソーは3点あるはずだが、展示されていたのはこれとライオンの絵の2点。2回とも同じ組み合わせだったから、残る1点は倉庫に眠っているのかもしれない。
マティス(1869~1954)の‘青い衣装の婦人’は日本でも公開されたが、マティスの描いた女性画ではもっとも華やかで心を奪われる一枚。アメリカにはほかに2点いいのがある。‘音楽’(オールブライト・ノックス・アート・ギャラリー)とまだ縁がない‘桃色の裸婦’(ボルティモア美)。ボルティモアにはこのマティスとゴーギャンのいい絵があるので一度訪問したいのだが、はたして。
モディリアーニ(1884~1920)もアメリカのコレクターはしっかり集めている。シカゴ、MET、ワシントンナショナルギャラリー、フィラデルフィア、MOMA、グッゲンハイム、クリーブランド、デトロイト。‘青い瞳’は日本にもやって来た。
2015年に対面が叶ったのがシャガール(1887~1985)の‘三時半(詩人)’。胴体に逆さにくっついた緑の顔、普通にみるとギョッとする絵だがマグリットのシュール表現とも重なり不思議な魅力がある。