長く続けている絵画鑑賞をふと振り返ってみてよくこの画家の回顧展が実現したなということがある。例えば、3年前、Bunkamuraで行われたシャヴァンヌ展。
フランス人にとって、シャヴァンヌ(1824~1898)は日本でいうと東山魁夷のように多くの人が知っている偉大な画家だろうが、日本人の西洋画愛好家のあいだではその知名度は印象派の画家とくらべるとだいぶ低いのではなかろうか。
日本での回顧展の開催は‘事件’ともいえる幸運なめぐり合わせだったが、アメリカの美術館ではワシントンのナショナルギャラリーとフィラデルフィアでは3点ずつみることができた。Bunkamuraにはフィラデルフィアから‘聖人のフリーズ’、ナショナルギャラリーから‘休息’が出品された。
2013年はじめてフラデルフィア美で必見リストに赤丸をつけていたのがミレー(1814~1875)の‘松明での鳥の猟’、ミレーというとあの安らぎの光景‘晩鐘’のイメージがこびりついているから、この黄金の輝きをみせる松明で鳥をつかまえる場面には200%衝撃をうけた。ミレーにこんな絵があったとは!
アメリカのホーマー(1836~1910)の‘ライフライン’もみたくてしょうがなかった作品。描かれているのは救難隊員が難破船から女性を救い出すところ。まるで災害映画の一シーンをみているよう。ホーマーは激しい波の描写が群を抜いて上手い。息を呑んでみていた。
女性の肖像画を得意としたサージェント(1856~1925)だが、若いころはこんな群像画を描いていた。パリのリュクサンブール公園を歩いたのは何年前だったか、今も変わりないだろうか。