ロングの‘ホワイト・チャペル・ストレート・サークル’(1981年)
数ある現代アートのなかでその作風が鬼才のイメージをもつのがドイツ人の作品。川村記念美で回顧展をみたことのあるリヒター(1932~)が制作する抽象絵画は画面にあらわれる色彩が美しくて鋭い。ナショナルギャラリーに飾られている黄色の帯が垂直に何本も走る作品は何かとこすれてできたような表面のかすれや傷跡が印象的。
第二次世界大戦が終わった年に生まれたキーファー(1945~)もドイツ人、その作品は発展する都市の対極にある周辺や農村の荒れはてた暗い場所を黒や灰色をベースにして地面の様子がリアルにわかるほど濃い密度で表現したものが多い。これまでみたのはまだ両手にとどいていないがアメリカの美術館では意外とでくわす。
同じくドイツの作家、ポルク(1941~2014)の‘希望とは:雲を引っ張ること’は奇抜なアイデアが足をとまらせる。あのふわふわした雲に縄をかけ引っ張るという発想はなかなかでてこない。運動会の綱引きを連想させる。とにかくおもしろい。
イギリスのロング(1945~)の‘ホワイト・チャペル・ストレート・サークル’は一見すると子どもなら思いつきそうな作品。拾ってきた石を体育館のようなところにびっちり置いて円をつくる。大人がこれをやると子どもとはちがい乱れは抑えて幾何学的な模様にもっていく。円はびっくりするほど大きくなくていいが、小さいとアートにならない。