スペイン旅行のツアーに参加するとマドリードでの行程はだいたい決まっていて、午前中にプラド美を訪問し午後はトレドへむかいトレド大聖堂などへ入る。そうするとエル・グレコ(1541~1614)の通としての顔が7割方できあがる。
では、残りのゴヤを求めてどこへ行けばいいのか。オプションは2つある。ひとつはハンガリーのブダペスト国立美、もうひとつめざしたいのはアメリカの美術館、NYのメトロポリタン、フリックコレクション、シカゴ美、ボストン美、そしてワシントンのナショナルギャラリー。とくに目を見張らされるのがMETとワシントン。
エル・グレコの大ファンなので過去4回入館したワシントンではどの絵をみたかはしっかりメモしている。トータル6点お目にかかれた。そのなかで最も印象深いのは‘ラオコーン’、ローマにある古代彫刻が作品のもとになっているが、中央で蛇と格闘するトロイアの神官ラオコーンの顔は恐怖で青ざめている。蛇の頭がこれほど顔に接近してくれば生きた心地がしないだろう。
‘聖マルティヌスと乞食’は聖人が乗った白い馬が主役を食うほどのインパクトをもっている。そして、いやがおうでも目につくのが聖人からマントを半分もらった乞食の姿。聖人の丈は違和感がないのにこの男は異様にひょろ長い。
アメリカにあるベラスケス(1599~1665)で最も惹かれるのはMETにある‘ファン・デ・パレーハの肖像’、また、日本で公開されたこともあるボストンの‘詩人ルイス・デ・ゴンゴラの肖像’も忘れられない一枚。ワシントンにあるのはベラスケスが個人的に描いたといわれる‘縫物をする女性’、モデルは娘。残念なことにまだ姿をみせてくれない。次回の楽しみ。
MET同様、ここはゴヤ(1746~1828)の宝庫。心を揺さぶられる女性の肖像画が4,5点ある。2008年のときは展示室が改修工事に入っていたためお目当ての女性に会えなかった。それから5年経った2013年、ようやく若い時の薬師丸ひろ子を連想させる‘サバーテ・ガルシア’と対面した。親しみを覚えるサバーテちゃんにぞっこん参っている。