ワシントンのナショナルギャラリーへ出かけて本当の良かったなと思うのは美術の本に必ず載っているが作品の数が少ないため見る機会がなかなかない画家に出会えたから。こういうと、美術好きの人はフェルメールを思い浮かべるかもしれないが、ほかにもビッグな画家たちがいる。
あまた存在する絵描きのなかで作品を全部みたくなるほど強い磁力を放っているものがいる。ファン・エイク(1390~1441)もそのひとり。大天使ガブリエルの羽の鮮やかな色彩が目を釘づけにする‘受胎告知’に遭遇したのはおおげさにいうと生涯の喜び。ドレスデン美であじわった感動が再び体を揺さぶった。
昨年マドリードのプラドで大回顧展をみた驚愕の画家ボス(1450~1516)、ワシントンにある縦長の‘守銭奴の死’はメッセージがいっぱい詰まった作品。もとは祭壇画のひとつのピースとして描かれたもの。現在、ほかのものはルーヴルやエール大美などにおさまっている。
臨終間際の守銭奴に死神は矢を構えベッドの下では悪魔が金の入った袋で誘惑する。お前の道はこっちだよ、と。でも、天使は‘ダメダメ、あなたはあそこへいくのよ’と光がさす窓の十字架を指し示している。中央の老人は元気なときの守銭奴でお金を貯めこんでいる。これほど強欲だと魂は救われないかもしれない。
グリューネヴァルト(1475~1528)は縁の少ない画家、だから、痛々しいキリストの姿に体が凍りつく‘小磔刑図’と遭遇したのは大きな収穫だった。フランスのコルマールにある‘イーゼンハイム祭壇画’を一度みたいと思っているが、それが実現するかどうかまったく見当がつかない状態。そのためこの絵をみたというのは大きな心の財産になっている。
今年話題の展覧会のひとつ、アルチンボルト展に想定外の絵がでていた。晩年の作‘四季’は過去にワシントンでみた記憶がない。2008年も2013年も飾ってなかったので、通常は展示してないのだろうか、それとも2013年以降に購入したのか、そのあたりはわからない。