美術館にいだくイメージは実際に出かけみて大きく変わることがある。はじめに思っていたのとは2倍も3倍もビッグな美術館だったのはサンクトペテルブルクのエルミタージュ美とワシントンのナショナルギャラリー。
NYのメトロポリタンはルーヴルと同じタイプの美術館で西洋絵画、古代エジプトの石像、東洋美術などなんでも揃っている。これに対しワシントンナショナルギャラリーは絵画だけを展示するビッグサイズの美術館。西館に古典絵画や印象派、アメリカ絵画があり、東館では近現代アートがずらっと飾られている。
古典絵画の傑作を数多く所蔵するMET、でもワシントンナショナルギャラリーにあってMETにない作品がある。それはダ・ヴィンチ。ルーヴル同様、ともに人気のカラヴァッジョもフェルメールもそしてラ・トゥールもあるのにこの違いによって、ワシントンのほうがなにか上のような気がしてしまう。
フラ・アンジェリコ(1400~1455)とフィリッポ・リッピ(1406~1469)はどちらもとても優しい宗教画を描く画家というイメージがある。‘東方三博士の礼拝’はそんな二人の共作。丸い画面のなかに大勢の人たちを登場させお馴染みのテーマを描いている。
飾り気のない聖母を素のままに表現した感じなのがリッピの聖母子。こういう静かでやさしさがにじみでる女性をみていると心が落ち着く。ちょっとな離れてちらっとみるくらいが精々で声をかけるなんてことはとてもできない。動物でいうと鹿をながめているときの気分と同じ。
一度見たら忘れられないのがカスターニョ(1417~1457)の‘若きダヴィデ’、石で倒したゴリアテの首が下にごろんとと横たわっている。こんな若造に不覚をとるとはゴリアテは思ってもいなかっただろう。諺に‘窮鼠猫を噛む’ということもあるのだから、戦いでは油断は禁物。