西洋絵画でも日本画でも特定の分野の作品に限定しないでいろんなタイプの絵画をみるように心がけている。普段接するものの大半は具象画だが、抽象的な画風に感動することも数は少ないがある。例えば、カンディンスキーの美しい抽象画をみると心が跳びはねる感じになる。
東ボヘミアに生まれたクプカ(1871~1957)が描く抽象画にも大変魅了されている。この画家に強い関心を抱くようになったのは名古屋で仕事をしていた1994年に愛知県美で開催された‘クプカ展’に遭遇したから。これでクプカに開眼し、さらに縁が深まってのが2003年のプラ国立美の訪問。
ここにはクプカを展示する部屋が3,4室あり、初期の神秘主義に影響を受けた象徴主義的な作品や40歳以降にとりくんだ抽象画の傑作が数多く並んでいた。回顧展にはここのコレクションから多く出品されていたので嬉しい再会となったが、その感激にひたる暇がないほどいい作品が次から次と現れた。本場に来た甲斐があった。
杉山寧のエジプトの絵のような印象を受けるのが‘黒い偶像’、またじっとみていると香月康男のシベリア抑留時代を描いた作品ともイメージがダブル。クプカはこうしたちょっと重たい作品のほかにおもしろい猿の絵や裸婦が馬に乗って浜辺ではしゃぐという陽気な絵もある。
絵の中にぐっと惹きこまれるのはやはり抽象絵画、具象から抽象へ移行する過程の作品が‘ピアノの鍵盤―湖’、画面には鍵盤を思わせるものが描き込まれなんだか音楽が流れてくるよう。
‘アモルファ、2色のフーガ’は抽象画へ本格的に移行した最初の作品でパリで大きな話題になった。2mの大作でテーマは音楽と絵画のコラボ、これをシンプルな円やリボンの重なりにより青、赤などの少ない色で明快に表現している。
‘おしべとめしべの物語’は生命の力強い息吹が壮大な宇宙の揺らぎとまさに共振しているよう。今、ビッグバンで生まれた宇宙創成の物語にのめりこんでいるのでこういう作品はいつまでもみていられる。